前回、美味しい食べ物としての『スシ』と、長い修行をした職人が作ったという物語が乗っかった『寿司』についての話をしました。
この「物語」というのは、今後、日本で、いや世界中でモノを売って行くにあたって非常に重要な要素なので、もうすこし掘り下げてみます。
さまざまな「物語」
まず、物語というのは、誰にでもあるということです。
我々は、日本人であり、男性だったり女性だったりして、出身地があり、今までやってきたことがありと、様々な物語を背負っています。そして、その物語は意外とたくさんの所で売りになる場合があります。
例えば、スシ職人。
外国でスシ屋に行くと、結構な割合で日本人の板前が1人います。彼は修行を積んだ職人である場合もありますが、多くの場合はちょっとスシを習ったレベルの人です。なんの経験もないバイトである場合もしばしばです。
でも、外国人からしてみたら、そこには「日本人がいるスシ屋」という物語になり、「あのスシ屋は本格的だ」ということになり、チリソースとともにその物語がスパイスになり美味しい食事になるわけです。
そんなバカな、と思われる方もいるかと思いますが、実際、日本国内でインドカレー屋にはインド系の店員がよくいますよね。タイ料理屋には東南アジア系の、中華料理屋には中華系がいます。実際、インド系の料理屋に就職するなら日本の労働ビザが降りやすいという理由もあるのですが、それ以上に彼らが店にいることにより「インド人もびっくり」という物語が付随するのです。