「業務委託」契約で「時間外」続き 「残業代出ない」は本当ですか?

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総合的に「労働者」にあたるかが判断される

   さらに、「労働者」であることの判断を補強する要素として、機械・器具の負担関係(会社のPCやコピー機などを使っているかどうか)、報酬の額、専属性の有無(その会社の仕事をメインにしているか)、その他、給与所得として源泉徴収をしているか、労働保険・社会保険が適用されているか、退職金制度、福利厚生制度に組み込まれているかなどの要素をあげています。そして、これら要素を総合的に考慮して「労働者」にあたるかが判断されます。

   では、ご相談者さんの場合はどうでしょうか。

   平日は会社へ出勤し、休憩1時間の8時間拘束とあります。このことから、本件契約では、勤務場所や勤務時間が決められており、自由に自分で選択できない状況ですね。また、業務の内容は、新規立ち上げ事業のシステムを組み立てていくというものですが、仮にご相談者さんが、会社から相当の指揮監督を受けていたら独立した裁量はないといえます。このような事情を総合考慮しますと、「労働者」と判断される可能性があります。

   その場合、労働基準法の適用があるといえるため、残業代の請求はもちろん、労働者である以上、原則として2週間前に退職を申し入れれば退職することができます。

   会社によっては、社会保険料の負担など人件費の増大を防ぐため、実質的に雇用契約なのにもかかわらず業務委託契約という形式をとるところもあります。今回のご相談のように、業務委託契約でも「労働者」にあたるかどうか争える場合もありますので、弁護士にご相談下さいね。


ポイント2点

   ●業務委託契約(企業と個人の契約の場合)は、個人が個人営業主として、企業と対等の立場で契約を結ぶことです。なので、業務委託で契約を結ぶと、形式的には、労働法の適用はない。

   ●しかし、仕事の仕方や拘束時間など総合的に見て、企業の「労働者」として認められることがあります。認められると、残業代の請求や退職の申し入れなど労働基準法を適用できる場合があります。

岩沙好幸(いわさ・よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼っている。「弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ」を更新中。編著に、労働トラブルを解説した『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。
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