「チリソースはないのか」と聞かれる
海外で『スシ』職人をやっている人の話を聞くと、
「寿司屋だけど、売上の50%がテリヤキ丼。25%がカルフォルニアロール」
「いいネタを使っても、醤油びたびたにされるどころか、チリソースはないのかと聞かれる」
など、『寿司』職人が聞いたら卒倒するようなことが日常茶飯事です。だから、海外に『寿司』職人がくると、思い悩んでしまいます。
ここで、ひたすらこだわり『寿司』文化をその土地に広めるか、現地の人が喜ぶ『スシ』を開発するかに分かれてくるのですが、私が聞く限り、後者の方が成功する確率は高いです。
自分がいいと思うモノを作る「プロダクトアウト」か、お客さんがいいと思うモノを作る「マーケットイン」かの違い。どちらが良いとか悪いとかではありません。
実際、日本にある中華料理も、イタリアンも、フレンチも、現地のモノとはまるで違うものです。スパゲティ・ナポリタンなんて、パスタ文化のない昭和の日本人に対し、必死にどうやって加工すれば食べてくれるかを考えた末にできた、創造の産物であると考えると、その涙ぐましい努力に涙がでてきます(カレーを食べないカンボジア人にカレーを提供していると、よく分かります)。
ストーリーを乗せた『寿司』も、お客さんが喜ぶ味を提供する『スシ』もどちらも価値があるモノです。お互い否定することなく、共存していくのがいいと思います。
また、自分で何かを売るのであれば、売るモノの配合を『寿司』的なもの何割、『スシ』的なもの何割くらいにするかを考えると、マーケティングの手法が見えてきますので、一度考えてみることをおすすめします。(森山たつを)