今回は岩沙先生に代わり、アディーレ法律事務所の千葉輝顕がご説明させていただきます。まだ届いていない人も多いマイナンバー。利便性が高くなる点もありますが、なかなか制度が難しくて理解しきれませんよね。
また、こういった新しい制度ができるたびに大変になるのは、個人だけでなくて管理する企業も同じです。制度の導入に向けて、どの企業も準備を進めていることでしょう。今回は、一個人ではなく労働者の目線に立ってマイナンバーをご説明します。(文責:弁護士 千葉輝顕)
教えたくありません
先日私のうちに、マイナンバー通知が届きました。これから運用していくに当たり、イマイチまだどう使われるのかが分かっていません。また、もしマイナンバーの情報が漏れてしまった場合どのような対応をしたらいいのか懸念しています。自分が勤めている会社に番号を教えるように言われているのですが、会社のセキュリティーが甘く教えたくありません。会社にマイナンバーを教えるのは義務なんですか?
弁護士解説 マイナンバー制度の概要とは
まずはじめに、マイナンバー制度とはどのような制度であるのかご説明します。
マイナンバー(個人番号)とは、住民票をもっている全ての方を対象に、個人を見分けるために指定された12桁の番号をいいます。住民票コードの11桁の番号とは異なる番号で、住民票コードを変換して生成されています。この12桁の番号を、社会保障や税などに関する行政手続等を行う時に利用するのがマイナンバー制度となります。
マイナンバー制度の目的は、行政の効率化、行政に関する各種手当や税金といったものの公正な給付と負担、行政手続きなどを行う際の国民の負担や手間の軽減、本人確認をしやすくする、などがあります。
では、このマイナンバーを使用するタイミングはいつかといいますと、現状では、社会保障、税、災害対策の3分野に限定されています。これを労働者目線で具体的に言うと、例えば、源泉徴収票を作る際の事務作業や、労災保険の申請および手続きをする場合などがあります。
ところで、企業が労働者からマイナンバーを取得する際には、原則として利用目的を明示して説明しなければならないとされています。ですので、何に利用されるか不安と思われる労働者の方は、企業に対し、何に使われるのかを聞いてみるのも、良いと思います。
マイナンバーは、原則として同じ番号を一生使い続けることになっています。このため、労働者の方が、企業にマイナンバーを預けたら、流出するのではないかと不安に思うこともあるかと思います。また、流出してしまったらどうすればいいのか気になりますよね。
企業への提供は、法律上義務付けられてはいないが・・・
まず、法律上では、企業に対して、マイナンバーや個人の情報等の流出を防止するために、安全管理措置というものが原則的に義務付けられています。例えば、情報が漏れにくい組織作りや、機器及び電子媒体などのウイルスや事件による盗難等の防止、外部からの不正アクセスの防止などを行っていく必要が有ります。また、企業において、例えば上記で説明した安全管理措置を行う義務に違反しているような場合には、特定個人情報保護委員から勧告や命令を受けることになります。更に、罰則も最近では強化されています。
しかし、企業において対策をしていても、100%マイナンバーや個人情報などの流出が防止できるということはありません。万が一、労働者の方が、企業にマイナンバーを流出されてしまった場合には、不正に使われるおそれがあるとして、マイナンバーを変更したいと行政へ申請することができます。
そしてご相談者さんが気になっていた、企業にマイナンバーを教えないといけないかどうかというお話ですが、労働者が企業に対し、マイナンバーを提供することは法律上義務付けられておりません。
しかし、労働者のマイナンバーは、これまでに説明してきた通り、源泉徴収票を作成する事務作業や労災保険の手続きや申請をする時などで記載が義務付けられているものです。ですので、労働者としては、企業が行政手続きを行う場合に協力をするのが良いのではないかと思います。
労働者としては、企業にマイナンバーを含む個人情報を預ける以上、流出のリスクを負うことになります。事件や事故が起こらないよう予防していくのが一番良いのですが、不幸にも流出されてしまった場合や流出のリスクがあると不安を感じた場合には、弁護士にご相談いただき、不安を解消していくのが良いかと思います。
ポイント2点
●会社は、源泉徴収票を作成する事務作業や労災保険の手続きや申請をする時などに、社員のマイナンバーの記載が義務付けられているので、会社に協力すべき。
●会社にマイナンバーを教えることで、流出のリスクなどが生まれる。自身の会社が信頼のおける会社かチェックし、事故が起こらないように予防する。