ビジネスで重要な事は「なにを作るか」だと考える人が多いのですが、実際にやってみると「何を売るのか」の方が大切だし、苦労もするということがわかります。
なぜなら、どんなにいいモノを作っても、売れるとは限らないから。そして「作る」事に関しては、比較的成功率が高いからです。
自分が作りたいモノを作るのに、予算の制限がなければそれなりの確率でそれなりのものが出来ます。正確に言うと、できたモノに評価を付ける人がいないので、自分が成功だといえば成功になります。
相手が満足しなくては買ってくれない
世界一美味いカレーができた!といえば、自分たちで「美味い美味い」といっている限りは幸せになれます。客観的な評価が入る場所がないので、自己満足に浸り続ける事ができるのです。
また、製品の価値に客観的な裏付けができるものもありますが、その多くは本当に求められているものかはわかりません。
「世界最速のクロック数のCPUが載ったスマホができた!」といえば、成功したように思えます。社内の会議でも大いばりでプレゼンをすることができます。
しかし、速いだけで使いにくい、値段が高い、大きすぎて持ちにくい、発熱して熱いから長時間持ちたくないなどなど、消費者がCPUの性能以外にも求めていることがたくさんあるため、成功に結びつくかは未知数なわけです。
このような自己満足が通じる「作る」に対して、「売る」ためには相手が必要で、相手が満足しなくては買ってくれないという高い壁があります。
自分たちが美味いと思ったカレーでも、数値的に最高のスマホでも、お客さんがどう思うかはコントロールできないのです。
さらに、売れる、売れないはキッチリと結果が数字で出てしまい、自己満足だけで成功だと言うことができません。予想数よりも売れたか、売れないかハッキリした数字が出てしまうので、ごまかしがきかない。非常にシビアに評価がされます。
失敗することは問題ではない
我々がやっている、サムライカレーの研修でも、顧客つまり研修生の満足度を高めるには、この「作る」の配分を増やせば良いということは分かっています。
「作った」「できた」「やったー」「俺たちがんばった!」「おつかれ!」でめでたしめでたしになれば、全てが丸く収まり、みんながハッピーになるわけです。
しかし、研修としては「売る」ことの大切さを気付いてもらう必要があります。
「自分たちでいいと思ったものがお客様にとっていいとは限らない」「いいモノを作っても売れるとは限らない」ということに気づくために、市場の洗礼を浴びて欲しいのです。
これが、海外でボランティアをすることと、海外で実践型の起業体験をすることの違いです。ボランティアで現地の人に何かを与えることは、大方なにをしても喜ばれます。でも、現地の人に何かを買ってもらうためには、つまり何かをあげてお金をもらうためには、現地の人が本当に求めているものを提供しなくてはならないのです。
だから、サムライカレーの研修プログラムでやったことは必ずしも成功するとは限りません。最後の日に今までの集大成のイベントをやったら、お客さんが1人しかこなかったこともありました。
でも、失敗することは問題ではないのです。
がんばってもうまく行かないことがある、働いてもお金が稼げないこともあるということに気づき、次はどうするか?ということを、諦めないで再チャレンジする習慣を付けて欲しいのです。
このマインドは、海外で働くだけでなく、日本で働く、もっというと生きていくために必ず必要なものだからです。(森山たつを)