「大学は出ておけ」―こうして子を諭す親は少なくないだろう。色々な教養を身につけられること、進路の選択肢が広がることなどが理由として考えられるが、大卒者の方が高卒者より生涯賃金が高いという印象があることも大きな要因だろう。
ところが、ある調査結果からは、高卒者の方が大卒者より生涯賃金が多くなるケースがあることが明らかになった。
大卒で中小企業に入社すると・・・
気になるデータは、労働政策研究・研修機構の「ユースフル労働統計2014 ―労働統計加工指標集―」(2014年11月刊)に掲載されている。
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」のデータを用いて、男女別、学歴別、企業規模別で生涯賃金の推計(60歳まで、退職金を含めない)を行ったところ、2012年の推計では、全企業規模では高卒男性が1億9240万円、大卒男性が2億5440万円と、学歴で大きく差が付いている。
一方、社員数1000人以上の大企業に就職した高卒男性の生涯賃金は2億3300万円なのに対し、社員が10~99人の中小企業に就職した大卒男性では1億9430万円。高卒が大卒を大きく逆転しているのだ。
60歳まで同じ企業で働き続けた場合(同一企業型職業生涯)では、大企業の高卒者が2億7030万円、中小企業の大卒者が2億1990万円と、差が広がっている。
ちなみに女性では、全企業規模で高卒者が1億2550万円、大卒者が1億9750万円。大企業に就職した高卒者が1億4300万円、中小企業に就職した大卒者が1億6280万円で、逆転現象は起きていない。同一企業型職業生涯の場合で、大企業の高卒者が1億9950万円、中小企業の大卒者が1億9370万円と初めて逆転する結果となっている。
「高卒で大企業」の難しさ
このデータが「PRESIDENT Online」で紹介(15年10月14日)されたことでにわかに話題に。 ツイッターでは、
「だから高卒大企業推薦入社が勝ち組だと」
「やっぱり高校でて即大企業行った連中は勝ち組だったか。下手に普通科、ましてやFランなんて行くもんではないな」
「勉強は好きでも得意でもないが、働く意欲は高いというような子は、商業や工業系の高校へ進学して就職をした方がいいように思う。奨学金を借りて認知度の低い大学へ行くよりも」
などデータに納得する声が上がる一方、
「下手に大学行くより難しいからな、高卒から大企業は」
「大企業なんて余程優秀な高校生じゃないと無理だべ」
と、高校から大企業に入社することの難しさを訴える意見もあった。
さまざまな意見があるが、少なくとも男性にとっては、通っている高校の科や卒業時の景況、どんな求人があるかを踏まえて、進学か就職かを慎重に選択するのがよさそうだ。「どこでもいいから取りあえず大学へ行った方がよい」という訳ではなさそうだ。(MM)