ラグビー・ワールドカップ日本代表の予期せぬ大活躍が、大きな話題になっています。
これまで過去7回の大会で1勝しかしていない日本チームが、今大会だけで3勝。しかも、世界ランキング3位だった南アフリカ相手に大金星を挙げるというおまけまでつきました。残念ながら目標のベスト8入りこそならなかったものの、その成果はほめたたえるに十分すぎるものであったと言えるでしょう。
なぜ日本代表は大活躍できたのでしょう。3勝という今大会の実績は、「成果」が決してフロックではないということを確実に意味しており、私はビジネスにも相通じるであろう、このラグビー日本代表チームの「成果」の背景にある仕掛けに、大変興味を持ちました。
まずは、担当者の営業「知識」レベルの向上
調べてみると、まず一番の成功要因として多数の外国人選手の起用と、ワールドカップを含め国際試合経験豊富な外国人監督の招へいが挙げられそうです。報道でも話題ですが、日本に比べてレベルの高い太平洋、南半球で育ち、ラグビー経験を積んできた選手たちが、メンバー31人中10人。さらに、チームを指揮したのは、ラグビー強豪国である、オーストラリア、南アフリカで指導者経験のあるエディ・ジョーンズ、ヘッドコーチでした。
そしてもうひとつの成功要因として、多くのメンバーが口にしている「世界一の練習量に耐えた」という事実も見逃せません。2015年4月の合宿始動から半年間、代表チームの選手拘束時間は約160日。7月上旬に始動した南アフリカとの比較でも、約2倍の練習量です。しかも合宿では、連日早朝5時半から1日3~4部構成の練習を実践。1か月で計91の練習セッションというボリュームは、他国の3か月分に相当すると言われています。
ここまで調べたところで、以前私がお手伝いした個人向け会員制サービス業企業K社の営業チーム立て直しのケースを思い出しました。「同業者の増加で実績はジリ貧です。成績不振者が半数もいて、このままではお手上げです。会社が持ちません」と、知り合いを介して私のところに駆け込んできたのでした。
K社では、10ある営業所で約80人の営業担当が新規会員獲得に向けた営業活動をしていましたが、約2割の成績優秀営業担当者と5割以上の成績低迷担当者の「成果」ギャップが悩みのタネでした。叩き上げの社長は、所長に「営業所の実績を上げたら、ボーナス倍増!」とハッパを掛け続けましたが、目立った効果はありませんでした。
いくらおいしいアメをぶら下げてみたところで、成績が振るわないレベルの低い営業担当者の状況を変えずに実績が上がるとは思えません。我々チームがまずしたことは、担当者の営業「知識」レベルの向上でした。自社サービスの基本はもちろん、ライバル企業のサービスも徹底的に調査し、その差異を明らかにしつつ自社の強みがどこにあるのかを「知識」として文書化し、全員に徹底して覚え込ませました。
「成果」は、「知識・情報量×行動量」で確実に上がる
具体的には、何の体系だてられた商品マニュアルもなく、次々と出される新サービスのパンフレットを持ってやみくもにセールスをかけているだけという現状を問題視。「知識」を体系立てて文書化し、読み合わせや取得チェックなどを日常スケジュールに組み込むことで着実に底上げました。
次に複数の優秀担当者の行動分析を徹底しておこない、これも「基本営業スタイル」として「知識」化しました。この「基本営業スタイル」を守らせつつ無駄の排除と営業活動増加を徹底管理する、日時での個別ミーティングと月次での実績管理スキームを構築。「行動量」の増加を徹底しておこなったのです。
すなわち「成果」が上がる営業チームを作り上げるために我々がした事は、「知識」の整備・底上げと「行動」量の増加だったのです。このやり方の定着までに半年、成果が目に見えて現れるまでに約1年を要しましたが、実施前に比べて成績低迷者は激減し、営業所全体での業績は3割以上増加するに至ったのです。
我々はこの手法を、「成果=知識・情報量×行動量」の法則と呼んでいます。成果が伸びない状況下においては、「知識・情報量」か「行動量」あるいはその両方に問題が潜んでいるケースがほとんどであり、その改善を図るなら「成果」は必ず上がるという理論です。
翻って、ラグビー日本代表チームのお話です。外国人選手および経験豊富な外国人監督の起用は、「知識・情報量」の底上げにあたります。そして、練習量の増加はイコール「行動量」の増加に他なりません。今回の日本代表チームの「成果」は、「知識・情報量×行動量」で確実に上がるというビジネスの法則どおり、なるべくしてなったと思えるのです。
このように「成果=知識・情報量×行動量」の法則は、ビジネスだけでなく広く「成果」伸び悩み対策に役立つと言えそうです。会社でも個人でも、なかなか「成果」が出ず壁にぶち当たった時には、この法則当てはめて打開策を検討されてみることをおすすめいたします。(大関暁夫)