「会社のためにデータ偽装」のウソ 「大義」のウラに潜む人間心理

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防止するためのポイント

   これを踏まえると、データ偽装を防止するためのポイントは次のようになる。

   まず、選択肢2のように思わせないこと、つまり、データ偽装を隠し通すのは不可能であり、必ず発覚するということを知らしめることが重要だ。日々作成される伝票や業務報告の点検から再徹底しなければならない。経理事務を一人に任せきりにしたり、チェックを形式的に済ませてしまったりするのは、粉飾を誘発させる罪深い行為だ。

   さらに、データ偽装をした者には懲戒免職を含む厳しい処罰が待っているということも知らしめることで、「自己保身のために粉飾をする(または、部下に粉飾をさせる)」という考えがいかに矛盾に満ちた愚かなものであるか、ということを痛感させる必要がある。

   最後に、どんな理由であれ、数字をごまかして体裁を整えることは「決して会社のためにはならない」ということを、経営者が本気で言い続けることである。その上で、業績不振や作業上のミス、品質問題などの悪いニュースほど早く、正直に報告することこそが「会社のため」であると強調し、実際に報告を受けた上司は逃げずにリーダーシップを発揮し、会社全体で問題を解決する方向に舵を切らなければならない。

   「問題を起こしたら承知しないぞ!」と言われると、人は問題を隠しやすくなり、データ偽装を誘発してしまう。上司は常日頃から「起きた問題を隠したら承知しないぞ!」という姿勢を明確にし、部下の仕事ぶりにきめ細かく目を向けることが大切だ。(甘粕潔)

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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