油断禁物「会長と社長の椅子のグレードが違う」 M&Aの成否をも分ける

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「上から目線」では・・・

「会長席の扱いですよ。以前からあるオフィス中央にドンと鎮座する重厚な袖付き木製机の社長席には長男社長が座り、会長席はどこから引っ張り出してきたのか、古ぼけた事務机が社長席の左後方に。これじゃA社の上から目線は明らか、まんま上下関係です。お得意先が見たら、『会社を乗っ取られてみじめなものだ。以前とは別会社だな』と思うでしょうし、社員だってどんなに体の良い説明があろうとも『結局は下僕扱いか』と思いますよ」

   こうして、50万円をかけて社長席以上に立派な机とイスとパソコンを購入し、会長席を社長席の横に新たに設えました。するとほどなく、不思議なぐらい社内外共に順調に回るようになったのだと言います。

「長きにわたる良好なビジネス関係に、上から目線は禁物です。発注と受注、元請けと下請け、売り手と買い手・・・。本来ビジネスでは常に対等なはずなのに、日本のビジネスシーンでは知らず知らずにどこかで上から目線が発生してしまう。買う方が上位、売る方が下位と言うように。下位扱いをされる当事者はもちろん、周囲で見ている人も絶対に良い気持ちはしません。規模の大小を問わずに、M&Aではそういうビジネスの対等感という基本姿勢が成否に大きく影響します。M&Aはビジネスの基本を再確認する場でもあるのです」

   確かに、個人的にもビジネスがうまくいかなくなったケースを振り返ってみると、相手の上から目線に目をつぶってスタートしたか、いつの間にかどちらかに上から目線が出始めていたのかもしれないと思わされることもしきりです。M&Aは自分の会社を売買するという、究極の売買ビジネス。だからこそ基本の大切さが、一層浮き彫りになるのでしょう。

   長年M&A仲介を手掛けてこられたM社長のお話に、ややもすると忘れがちなビジネスにおける基本の大切さを教えられる思いがしました。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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