花嫁がクレーマーに変わる時 ブライダル美容師が見た「宴の裏」

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   10月と5月は、1年で最も結婚式が多いシーズン。結婚式場は、どこも大忙しです。今回は、あるホテルの「ブライダル部門」で働いている美容師さんに、「仕事上の苦労」について伺いました。

   ウェディングという『ハレ舞台』にかける新婦や、そのご親戚などは、特に思い入れが強いようです。その熱意が、時に「クレーム」と化すこともあるらしく・・・。

「髪飾りの位置がズレていた!」

花嫁が・・・
花嫁が・・・

   「私たちブライダル・ヘアメイクを手掛ける美容師って、派遣もありますけど、ホテルに直接雇用されていることも多いんですよ」と語ってくれたのは、専門学校卒で某ホテルに入社した美容師、裕子さん(33)。この道、10年以上のベテランです。

   そんな裕子さんに、聞いてみました。「結婚式場には、色んなカップルが来るでしょうし、一部には『クレーマー』みたいな人も、いるのでは?」

   裕子さんいわく「そうですねぇ、います、います」。一体、どんな「文句」をつけてくるのでしょうか。

「クレーマーは、ほぼ全員が女性ですね」と、言い切る彼女。「新郎が、新婦の不満を代弁してくることもありますが、『ここの髪飾りがズレていた!』とか、そういうクレームがいちばん多いですね。あとは、親戚の女性が『留袖の着付けがおかしかった』と言ってくることもあります」

   なぜ、クレームは起きるのでしょう。ウェディング現場の美容師たちは、新婦さんの言うとおりに、理想を叶えるのが仕事。一生懸命こなしたのに、後から「クレーム」とは。

   裕子さんいわく、「今の結婚式とか披露宴の様子って、ぜんぶ映像で残るじゃないですか。それで、結婚式の翌々日あたりから、冷静になった新婦さんの一部が、『DVDや写真の写りが悪い!』と怒り始めるんです」

最終手段は「裁判します?」

   披露宴の翌々日になって、増え始めるという「クレーム」。その要因は、映像や写真にありました。ある新婦さんは、結構な「ぽっちゃり体型」だったにもかかわらず、「写りが太って見える!」と、怒り心頭だったそうです。裕子さんは内心、「あなたは元々、太っているじゃないですか!」と、言い返したくなったそうですが、そこは冷静に対処。

「クレーマーさんって結局、披露宴にかかった『撮影費用』を払いたくないんですよ。何かにつけて、気に入らなかったからタダにしろ、という人が多いので、ある時から『撮影費用を踏み倒そうとしているんだ』って、気づきました」
「だから、『こちらは要求通りのことをしましたよ、これ以上何かあるなら、裁判しますか?』と返すんです。すると、一気に引いていきますね」(裕子さん)

   なるほど。最初から「費用を踏み倒す」目的で、クレームを入れる新婦さんも、一部にはいるのかもしれません。しかし、それを「裁判」で争うのは、新婦側にとって圧倒的に不利。文句を言ってもムダ、諦めが肝心だと分かってもらうのも、結婚式場の「クレーム対処法」なのでしょう。ハレ舞台にかける花嫁さんたちの情熱は分かりますが、そのクレームは、まるで「理想の『私』を返して!」と主張しているようで、なんだかなぁ・・・おめでたい宴の、ちょっと恐い裏側を見た気がします。(北条かや)

北条かや(ほうじょう・かや)

1986年、金沢生まれ。京都大学大学院文学研究科修了。著書に『本当は結婚したくないのだ症候群』『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』。ウェブ媒体等にコラム、ニュース記事を多数、執筆。TOKYO MX「モーニングCROSS」、NHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」(2015年1月放送)などへ出演。
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