弁護士解説 会社は「相当と認められる限度において」求償することができる
会社のパソコンをなくすことは大失態ですが、クライアントと部長に大量に飲まされ泥酔してしまったのであれば、ご本人だけの責任とも言いにくいです。接待でお酒を飲んで盛り上げた上に、損害賠償を受けるなんてかわいそう過ぎですよね。
まず、今回の場合、会社は使用者責任(雇用している側)として、クライアントに対して、クライアントが先に新商品を発売していれば本来得られたはずなのに得ることができなかった利益を損害額として支払う可能性があります。この場合、会社は、後輩の方に対して、クライアントに対して支払った金額を請求することができます。これを「求償」といいます。
クライアントに発生した損害となれば、何十万、何百万では済みませんよね。「えー、そんな金額払えるわけないよ!」と思ったかもしれませんが、ご安心ください。判例上、会社は従業員に対して、「相当と認められる限度において」求償することができるとされています(茨石事件。最判1976<昭和51>年7月8日第一小法廷判決)。
会社としては、情報セキュリティの重要性がこれだけ叫ばれているわけですから、クライアントの機密情報のような重要な情報には鍵をかけてパスワードを設定するとか、機密情報の入った社用パソコンの社外への持ち出しを禁止するとか、情報流出防止のため手を尽くすべきだったといえます。
そうしたセキュリティ対策をせず、従業員の不注意で起きてしまった損害の大部分を、従業員に負わせるというのはいかがなものでしょうか。
そうすると、後輩の方にも軽率な点があったのは確かですが、会社が支払った賠償金の多くを、後輩の方に請求するというのはできないものと思われます。
結論として、後輩の方の負担する金額はそれほど高額にはならないでしょう。ただ、一定の金額については請求されてしまう可能性があるので、飲みすぎにはくれぐれも気を付けましょうね!