事業継承「手遅れ」で泣くのは従業員 「10年計画で考えて欲しい」

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資本継承とM&A

   こんな状況にありながらも経営者は「いずれなんとかなるだろう」と放置しつつ、Xデーが近づいてくる。社員はそんなこととはつゆ知らず、社長が突然死して初めてどうにも立ち行かない自社の現状を知らされることに。倒産はしなくとも後継なく廃業すれば皆職を失い、40代以上社員には再就職困難と言う地獄が待ち受けているのです。

   企業コンサルタントのY氏が、S氏の話をうけて続けました。

「同族承継、従業員承継が思うようにできないケースでは、資本承継という最後の手段が残されているのですけど、どうも古い経営者の皆さんはこのやり方に対するご理解に乏しく、せっかくの救われるチャンスをミスミス逃している場合も多いのです」

   Y氏が言うところの資本継承とは端的に言えばM&Aのことで、他の会社や事業ファンドに自分の会社そのものを買ってもらい、自社を存続させるという手段です。中小企業には縁遠いイメージが強いM&Aですが、Y氏は「中小企業にこそM&Aは重要な戦略的手段」と断言し、ご自身がかかわった次のようなエピソードを話してくれました。

   ある日突然、Y氏の会社が提携している税理士から顧問先企業の経営危機を助けて欲しいと連絡がありました。50人規模の会社社長は周囲にガンであることを隠して仕事をしていたのですが、突然倒れて入院。既に末期ガンで余命3か月を宣告され、朦朧とする意識の中で「なんとか従業員を守って欲しい」と税理士に泣きついたのだと言います。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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