昨今「キャッシュレス」な社会になりつつあるが、今後お金が紙幣や硬貨といった姿形をますます失っていったとき、子どもに「お金」というものを教えることはより難しくなるのではないだろうか。
そんな近い未来に備えてか、ニュージーランドの銀行 ASBが「ゾウの人形」とそれと連携させて使うスマートフォンアプリを開発し、将来の親の悩みに応えようとしている。
硬貨が手裏剣のように飛んでいく?
この取り組みを紹介する動画は、お小遣いをもらうために洗車や庭の掃除を手伝う子どもたちの姿から始まる。手伝いが終わるとその分だけ子どもたちはお小遣いをもらえるのだが、キャッシュレスな社会ではどのようにしてそれを受け取るのだろうか。
ニュージーランドの銀行 ASBが開発した、黄色い「ゾウの人形」のおなかには、金額が表示されるディスプレイがついている。この金額は、子ども名義の銀行口座に貯まったお金の総額だ。もらったお小遣いなどが含まれているのだろう。
次に、同じくABSが開発した専用のスマートフォンアプリを立ち上げ、子どもの銀行口座に送金したいひと、主に両親がログインする。そして、このアプリを使って、両親の口座から子どもの口座に送金するのだが、その方法がとても簡単で、かつおもしろい。
スマートフォンアプリの画面上で送金する金額の硬貨を選び、その状態で、スマートフォンをゾウの人形のある位置に向ける。そして、スマートフォンの画面上で指を人形のある方向にスワイプすると、硬貨が手裏剣のように投げられる。
すると、ゾウの人形のおなかに表示される金額が増える。つまり、両親の口座から子どもの口座に送金されたことになる。この指の動きや、ゾウのおなかに表示される金額が増えることから、子どもは「お金が貯まった」ということを感覚的に理解することができる。
また、ちょっとしたゲーム感覚もあるので、子どもはまたお小遣いをもらうために、もっと家の手伝いをしようとやる気を出すかもしれない。
動画は、2015年9月上旬に公開された。
お金の本質というものは、紙幣や硬貨ではなく価値のものさしであることに、あらためて気付かされる。そして、キャッシュレス、デジタルな社会になったからこそ、今回のような目に見えるアナログなアプローチが、子どもの教育においては有効であるということがおもしろい。(岡徳之)