今(2015)年10月から、国民1人1人に「12ケタ」の番号が付与される「マイナンバー制度」が始まります(運用は16年1月から)。「何が変わるのか、よく分からない」という人もまだまだ多く、不安を抱えている人もいるようです。
今回は、「これまで、会社に副業の届け出をしてはいるけれど、どんな仕事なのかはウソをついていた」A子さん(20代)の「マイナンバー導入で、仕事内容が会社に知られてしまうの?」という悩みを通して、新制度と副業の関係について考えてみます。
「会社には『本当の副業先』を言ってない」
筆者が、「夜の仕事」に従事する女性たちにインタビューしていた時のこと。「本業はアパレル会社の販売員だけど、副業としてガールズバーで働いている」A子さんと知り合いました。彼女とは今も、たまに連絡を取っています。A子さんいわく、本業の勤務先には、「親族の会社を手伝っている」ことにしており、その収入がプラスされるため「確定申告は自分でしています」。
つまり、彼女の「副業」は一応、許可されているわけですが、「副業先の業態」は、ウソをついているのですね。「マイナンバー制度で、人事に『ガールズバーで働いている』ことがバレたら・・・親族の会社で働いているなんて、ウソをつかなければよかった」と、不安を訴えるA子さん。こうした悩みを抱える人は、結構いるようです。実際、どうなるのでしょうか。筆者は、ある司法書士の方に、見解を伺いました。
「マイナンバーは、勤め先にも伝えますよね? ということは、副業の届け出をした場合、副業先の業態まで、人事に分かってしまうのでしょうか?」
「未知数の部分が大きい」
「マイナンバーの運用は、僕たち法曹関係者にとっても、未知数の部分が大きいんですよ」と、前置きしつつ答えてくれたのは、司法書士のKさん。「ただ、原則として言えるのは、副業届けを出しているA子さんの、『副業先の社名や業態』がバレる可能性は極めて低いということです」
「え、そうなんですか!?」と驚く筆者に対し、Kさんは続けます。
「マイナンバーは、国や自治体が、税制や社会保障制度のために運用するものです。これがもし、本人の了解もなく、法人や個人事業者などの間で『マイナンバーに紐付いた個人情報』がやり取りされることになったら、個人情報保護法に違反することになってしまいます」
「法人は『個人情報』を守る義務がありますから、A子さんの副業先の社名が、法人マイナンバーで筒抜けになる可能性は低い。むしろ、そんなことがあったら、プライバシーも何もない社会になってしまいます」
法人マイナンバーの情報には、その会社の取引先など、細かなデータが紐付いています。それを、一般人が簡単に知ることができれば、個人情報も何もあったものではありません。というわけで、司法書士、Kさんの見解では、「副業先の法人名や職種が、本業の会社にバレる可能性は極めて低い」。
ただ、Kさんは最後に、「国の方でどのように管理するかによりますが、もし副業先の法人のマイナンバー情報が、国のミスで漏洩することがあれば、それに紐付いた従業員の情報も漏れて、外部に副業先の名称や職種が知られる懸念はあると思います」と、付け加えていました。
また、A子さんのケースとは異なり、会社には内緒で、これまで副業分の確定申告をしていなかった人は、住民税額の変化から『副業をしていること』が会社に分かってしまう、という事態はあり得そうです。うーん、やっぱり、色々心配!?(北条かや)