増える「異文化の客」 迷惑かビジネスチャンスか

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   先日、お好み焼き屋の前をとおったら、入り口に大きな文字で、「ワンドリンク注文をおねがいします」と書かれていた。

   私の捉え方では、お好み焼き=食事なんだから、別にドリンクは水でもいいんじゃやないの、と思ったのだが、どうやらこの手の問題がほかでも発生しているようなのだ。

『酒場の水問題』、居酒屋で水ばかり頼む人を許せますか?

という記事(CAMPANELLA、2015年9月17日配信)で、ずばり指摘がされていた。

「居酒屋やダイニングバーで水(水道水)を飲み、アルコールドリンクもソフトドリンクも注文しない客が増えている。お金を払うのは、食べ物だけ」

水だけ頼んで長居する客がでてきて、お店は迷惑を被っているという内容だ。

まったくの「新規顧客」がやって来ている

飲み物は...水
飲み物は...水

   こうした客がでてきた背景として、給与が減ったというのもあるが、もっと現代的な要因として、グルメサイトやSNSの台頭があると記事は指摘する。いままでは、居酒屋文化やマナーを知っている層しかこなかったが、ネットの普及で、酒を飲む習慣のないひと(当然居酒屋のマナーをしらない人)が、食べログ上位の店だからということでファミレス感覚やってくるようになったことだと、結論づける。グルメサイトが、この2つをつなげたとしている。

   これに対して、マナーの問題とか、優しく酒場のルールを教えてあげるべきだとか、そういう議論もなされているようだが、私は、そういう論点では単なる愚痴におわるだろうと思う。

   この記事をよんでむしろ驚いたのは、従来、酒を飲まず居酒屋と接点のなかったひとがやってくるようになっているという点だ。

   これを、「マナーを知らないやつがきて迷惑」「長居されて困る」と捉えているが、まったく逆だ。

   むしろ、まったくの「新規顧客」がやって来ているのであって、喉から手がほしいほどの新規顧客のはずだ。新規のセグメントがやって来ているのであって、これを開拓しない手はない。むしろ従来の酒飲み層が減ってきているのであって、新規のセグメントが来るとうのは、経営戦略でいえば、非常にこのましい状況であるはずだ。

新規の客でどう儲けるか

   居酒屋側からみれば、そういう層は腹ただしいのはたしかだろうが、だからといって、酒のマナーを知らない(酒を普段飲まない層)をいくらディスったところで、お店の利益向上につながるだろうか?むしろ、積極的に利益につなげたほうが良いのではないだろうか。

   例えば、顧客が食事が目当てならば、持ち帰りを提供する方法もある。長居は避けられ、回転も良くなる。セットメニューにして、カウンターだけのファストフードコーナーを用意してもよい。食事のみのひとは1時間制などとしてもよいだろう。顧客を区別し、それぞれに沿ったサービスを提供すれば、新規顧客がやってくる分、売上は確実に伸びるはずだ。

   マナーとかの問題にするのではなく、この新規の客でどう儲けるかを論じるのが本当の論点であり、それを考えた人が儲けられるだろう。

   もちろん、儲けなくていいから、居酒屋文化の維持を第一におくのも、ひとつのポリシーだろうし、紹介制や予約制にして既存顧客以外はお断りにするのも選択肢だろう。上客だけで回る店は新規顧客を取る必要はない。

   選択はそれぞれだが、市場は常に変化する。他人(新規顧客)のせいにするのではなく、そのなかで、何を取って何を捨てるのかを考えるのが経営者の仕事だ。ただ受け身で、へんな客が来ると愚痴っているだけでは、経営者失格である。(大石哲之)

大石哲之(おおいし・てつゆき)
作家、コンサルタント。1975年東京生まれ、慶応大学卒業後、アクセンチュアを経てネットベンチャーの創業後、現職。株式会社ティンバーラインパートナーズ代表取締役、日本デジタルマネー協会理事、ほか複数の事業に関わる。作家として「コンサル一年目に学ぶこと」「ノマド化する時代」など、著書多数。ビジネス基礎分野のほか、グローバル化と個人の関係や、デジタルマネーと社会改革などの分野で論説を書いている。ベトナム在住。ブログ「大石哲之のノマド研究所」。ツイッター @tyk97
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