「社会生活基本調査結果」(総務省統計局、2011年)によると、有業者の平均出勤時刻は8時26分で、うち正規の職員・従業員では7時53分だった。読者の勤務先も、8時から9時半の間が始業時刻というところが多いのではないだろうか。
ところが、この始業時刻は「従業員にとって拷問に等しく、病気になる可能性も高まる」という研究結果がこのほど明らかになった。
「9時5時」で健康に深刻な脅威が!?
カナダ紙「ナショナル・ポスト」オンライン版に、「10時前に始業することは拷問に等しく、従業員を病気にしストレスを与える」という衝撃的な見出しの記事が掲載された(2015年9月9日)。
英オックスフォード大学のポール・ケリー博士の研究によると、55歳以下の概日リズムは、一般的な「9時5時」の労働時間と全くずれていて、これが仕事のパフォーマンス、気分、精神衛生に「深刻な脅威」となっているという。
実験では、16歳の学生は10時、大学生は11時に授業を開始すると、最高のパフォーマンスが発揮できたそうだ。ケリー博士が以前教頭を務めた学校で、始業時刻を8時30分から10時に遅らせたところ、トップの成績が19%も向上したという。
人間の臓器にはそれぞれ異なるパターンがあり、一般的な就業時間ではそのパターンを2~3時間もずらすことになるのだという。
また、「9時5時」は睡眠不足にもつながる。人体は日光に同調しているため、24時間のサイクルをずらして特定の時間に起きることは本来なら無理な話。ケリー博士は「刑務所や病院では、囚人や入院患者は無理に起こされ、食べたくない食べ物を食べさせられる。囚人や入院患者でもない人がより従順にそれを行っているのはどうかしている。睡眠不足は拷問なのだ」と語気を強める。
睡眠時間が6時間未満という日が1週間続くと、遺伝子機能に711個の変化が現れるという研究もある。
睡眠不足はパフォーマンス、集中力、長期の記憶に悪影響を与えるほか、薬物やアルコールの使用を促進することもわかっている。さらに、不安、不満、怒り、衝動的行動、体重増加、高血圧、免疫力の定価、ストレス、精神衛生の状態に悪影響を及ぼす―と、何一ついいことがない。ケリー博士は、「従業員は10時に仕事を始めるべき。9時始業は55歳まではすべきでない」と語っている。
「始業遅くしたら帰りが深夜になるんじゃ・・・」
この研究結果が日本のメディアでも紹介され、ネット上で話題に。
「ほら、やっぱ10時出勤とかのが頭冴えますって!最低時給が決まっているように始業時間10時統一しないかなー。無理か」
「そういえば朝11時出勤の職場で働いていた頃は、毎日イキイキと働けていたな。確かに体調も良くストレスも無かった」
「今は7-16時で働いてるけど、8-17時よりも精神状態が良くない自覚はある」
など納得の声が上がる一方、
「でも日本人は朝11時就業にしたら深夜に帰りそう」 「朝はかどることもあるけどね」
「10時開始で世の中まわるならもうなってるわー」
と、ちょっと冷ややかな意見も多い。
「睡眠時間の問題なんだから勤務時間を減らさないと無駄じゃね?」と、始業時刻はともかく、「睡眠時間の確保こそが重要」という意見もあった。(MM)