2015年9月10日、厚生労働省において、「ブラックバイト」被害を訴える大学生アルバイトと、労働組合「ブラックバイトユニオン」の記者会見が行われた。
会見で語られた劣悪な労働環境は、各メディアでも報道されて話題になっている。
大学生が勤務していたのは、首都圏の「しゃぶしゃぶ温野菜」。大学生と労組が、未払い賃金の支払いなどを求めて団体交渉を申し入れたのは、同店のフランチャイズ本部「レインズインターナショナル」(以下「レインズ」)と、フランチャイズ経営を行っている「DWE JAPAN」。
「アルバイトなんだから、そんな酷い店サッサと辞めたらいいのに・・・」
会見内容によると、同店では以下のようなブラックな労働実態があったという。
・2015年4月から8月まで、1日も休まずに4か月連続勤務、平均1日12時間労働を強いられる
・給与も一部が未払い
・「2時間食べ放題コース」のお客を時間どおりに帰せなかった罰として「自腹」で支払うようたびたび強要され、通算で十数万円を支払わされる
・退職を申し出ると、店長から「ミスが多いから懲戒免職」「そうなると就職に影響するぞ」「どうやって責任をとるんだ」などと言われ、胸ぐらをつかまれる
・帰宅途中に店長から、「家に行くから待ってろよ。殺してやるから」という、脅迫めいた電話があった
結果的にこのアルバイト学生は大学にも通えなくなり、前期の全授業の単位を落としてしまったという。
会見の様子は、NHK(社名は出さず)や毎日新聞(「レインズ社」名を明記)などが報じた。
このような報道を見聞きすると、
「アルバイトなんだから、そんな酷い店サッサと辞めたらいいのに・・・」
と感じる人も多いかもしれない。一部の論者からは「彼らは『洗脳』されているのだ」という声も聞かれるが、筆者はそうは思わない。昨今では、学生のアルバイト側にも辞められない、それなりの事情があるのだ。
・学費が上がり、奨学金制度も不十分で、家計が苦しい学生にとっては、生活のためにアルバイトに頼らざるを得ない実態がある
・勤務時間に融通が利くフリーターとの競争に晒され、辞めたくても次のアルバイトが見つからず、居続けざるを得ない
・「新しい仕事を最初から覚える」「新たな人間関係を構築する」ことに躊躇する気持ちもある
3つ目の点については本人の問題としても、経済状況などについては不可抗力である。