看護師F子の転職物語 彼女はなぜ「美容クリニック」を選んだのか

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   拙著『整形した女は幸せになっているのか』(星海社)を執筆する際、さまざまな美容クリニックで「看護師」を務める女性に、聞き取りを行いました。今回はその中で、特に印象的だった女性、F子さんの事例をご紹介します。看護師として、約10年のキャリアをもつ彼女は、以前、救命救急センターで働いていました。が、日々、患者さんの「ギリギリの状態」と向き合う中で、精神的に辛い思いをしたといいます。そこで転職し、女性たちの「美」を叶える「美容整形」の現場へ飛び込んだのです。

   「以前の職場で、最初に配属されたのは、病棟でした。その数年後、救急外来へと配置転換になったんです」と語る看護師、F子さん(32歳)。物静かな雰囲気ですが、芯はしっかりしている印象です。彼女が経験した「救急医療」の現場は、想像していたよりずっと、ずっと大変だったといいます。

「悲しい場面に直面することが多かった」

やりがいは、あるけれど・・・
やりがいは、あるけれど・・・
「もちろん、救急センターでは医師が中心として動きますが、私たちも、全力で尽力します。が、どうしても、救急の患者さんを救うには、限界があって・・・必死で処置をしても、亡くなられてしまったり、たとえ命だけは助かっても、半身不随、首から下が全く動かなくなってしまう方もいたり・・・辛くて、一生この現場にいることはできないと感じてしまいました」(F子さん)

   地域の拠点となる「救急医療」の現場には、交通事故に遭った患者さんも、多く運ばれてきます。

   「交通事故だと、助からない場合も多くて。本当にやりきれないというか、悲しい場面に直面することが多かった」というF子さん。数年の経験を経て、心身に不調をきたすようになってしまいました。

「だから、思い切って、『美容クリニック』に転職を決めたんです」

「少しのマイナスを、プラスにもっていく」

   F子さんは、たまたま見つけた美容外科クリニックの求人を見て、転職しました。これまでの仕事と違い、「お客さま」の美を叶える整形手術(の補助)がメインです。

   彼女のように、最初は病棟勤務や救急外来などの現場にいた人が、「美容クリニック」に転職する例は、珍しくないそうです。

「救命救急センターの仕事に、やりがいがなかったとはいいません。でも、私には続けられなかった。患者さんの『マイナス』を、『プラス』に持っていくことが、できなかったからです。その点、今勤める美容外科は、患者さんの『少しのマイナスを、プラスにもっていく』仕事。はじめから悪いところなどない女性や男性の、『プラスをプラスにもっていく』こともあります。キレイになった女性が喜ぶ顔を見るのが、何より嬉しいんです」(F子さん)

   「扱いづらい患者様もいるけど、やりがいはある」。そんなF子さんは最後に、「私みたいに、患者さんの喜ぶ顔が見たい、という看護師は多いと思いますよ。それを、どんな病院で叶えるか、という違いだけではないでしょうか」と、付け加えました。(北条かや)

北条かや(ほうじょう・かや)

1986年、金沢生まれ。京都大学大学院文学研究科修了。著書に『本当は結婚したくないのだ症候群』『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』。ウェブ媒体等にコラム、ニュース記事を多数、執筆。TOKYO MX「モーニングCROSS」、NHK「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」(2015年1月放送)などへ出演。
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【ブログ】コスプレで女やってますけど
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