企業トップが変わる時 「価値観の変化」に取り残されるな

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   米経済界でも名高いCEOの1人である日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)のアラン・ラフリー氏(68歳)が、10月末(2015年)で退任する。後任となるのは、化粧品を扱う美容部門などのヘルスケア部門を統括するデビッド・テイラー氏(57歳)。ラフリー氏は、元GE社CEOのジャック・ウェルチ氏と並ぶ名経営者と評価される存在。環境の変化に対応して大胆な改革をしてきました。

   このカリスマ経営者は、どのような基準で後継者を選んだのか?想定できるのは経営者としての資質に加えて、社内外における納得性など様々な観点から選ばれたのでしょう。後継者のテイラー氏は、これまでのラフリー氏の路線を踏襲すると明言しています。でも、本当に路線を引き継ぐのでしょうか?

トップに立った瞬間、「新しいことをやりたい」と思うもの

企業のトップが変わるとき
企業のトップが変わるとき

   当方は、数多くの経営トップが変わる場面に遭遇してきました。その際、徳川家康が豊臣秀吉の晩年に「これまでの体制を維持していく」と言いながら、秀吉の死後には反古にしたように、世の中の会社の経営者は、トップに立った瞬間、「新しいことをやりたい」と思うものです。

   あるいは過去の方針を見直し、否定することをよしとする傾向もあります。というのも、今までと同じやり方を踏襲してうまくいったとしても、「あの人は新しいことに対する挑戦心がない」とか「あの人自身のカラーが無い」と言われてしまうからです。それゆえ、経営者は必ず、自分がトップになった時に自分のカラーを打ち出そうとするのです。例えばサッカー日本代表監督に新たに就任したハリルホジッチ氏は、「フレッシュな選手の積極起用」を明言し、初の公式戦ではその言葉どおり、これまで活躍してきた本田選手や香川選手といった、日本国民なら誰もが知っているスター選手を先発メンバーから外しました。これまでにない大胆な選手起用で結果的に勝利を収め、それが監督の力量を示すことに繋がったのです(その後は負けが込んで、元のメンバーに戻りつつありますが)。

新しいトップが重要とみなす価値観を理解しておく

   いずれにしても、トップの打ち出す「新たなカラー」には、過去の否定、ないしは過去と真逆になる「大転換」の可能性も大いにあります。その場合、今まで優秀だと思われてきた人の「優秀さ」そのものが、経営のトップが変わった瞬間に変化し、「優秀ではない」または「不要のもの」とされてしまう可能性もあります。例えば、営業力を最大の武器と考えていたトップの時代には

『営業成績をあげていれば、勤怠などの生活態度に問題があっても不問』

であった組織が、管理系の経営トップに変わった瞬間にパージ(粛清)されてしまった会社を取材したことがあります。当事者にしてみれば「いままでのやり方が全否定された」と戸惑うしかなかったようです。ただ、よくよく聞いていくと、大転換に気づいて自らを変えられるトリガーとなる機会はあったようです。新たなトップは

「これまでのように営業成績だけで評価する会社から脱却します。周囲と助け合う精神を社員のみなさんに期待します」

とのメッセージが新しいトップからメールで発信されていたのです。やはり、会社のトップや経営陣が変わった時には、彼らが重要とみなす価値観をきちんと理解しておくことが必要と言えるでしょう。(高城幸司)

高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
「高城幸司の社長ブログ」
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