佐野氏「東京五輪エンブレム」騒動にみる 企業広報セオリー上の失策とは

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   世間を賑わせた東京オリンピックのエンブレム問題は、デザイナー佐野研二郎氏がそのデザインを取り下げることでひとまずの決着をみました。しかしこの結末には、どことなく後味の悪さが漂っているのも事実ではないでしょうか。

   それはなぜか。恐らく、(2015年)8月5日の会見以降、姿を見せない佐野氏に対して激しくなる一方だった批判の嵐の中で、自らのホームページ上で「怒り」をにじませたコメントを出してデザイン取り下げたことにより、佐野氏自身の心中や事の真相を自らの言葉で語ることなく突然半端な状態のまま事切れた感じがしているからだと思います。

「逃げ」と「怒り」

逆ギレ?
逆ギレ?

   企業広報的な観点から申し上げるなら、佐野氏の広報対応のセオリーから著しく外れているのです。ポイントは、大きく2点。一方的なメッセージを流すのみで、会見を始めとした双方向コミュニケーションをとらない「逃げ」の広報姿勢。もうひとつは、広報担当者のメディア対応やコメントからうかがわれる、逆ギレと受け取れる「怒り」の広報対応です。

   広報対応における「逃げ」は自らの立場を悪くし、疑念感渦巻く中での「怒り」対応は一層の不信感へと導くと言われています。この直接のコミュニケーションを避けた「逃げ」と、感情に任せた「怒り」が、メディア等取材サイドやこの一件を注目して見ている国民からの理解を遠ざけ、デザイン取り下げと共に後味の悪いモヤモヤ感ばかりが残ってしまった最大の原因なのではないか、と思うのです。

   実は私にはこれと似た経験が、ある経営者とのお付き合いの中にもありました。社員30人規模の公共設備設計A社のT社長はワンマン経営の2代目で、能力は高いものの取っつきにくく、お酒も飲まないので社内コミュニケーションが希薄という難点を抱えていました。

   ある時に中途採用で入社して間もない車好きの若手社員Hくんが、喫煙所で社長と一緒になり、こんなことを尋ねました。

「社長が通勤で使っているベンツは会社の所有なのですね。レクサスのスポーツタイプもお持ちだって聞きましたけど、社員に貸し出ししてくださいよ」
大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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