上に立つ社長が変わらないなら社員は変わらない
「これでは、社長が望んでいた組織風土の変革には遠く及びませんよ」。私のそんな問いかけに彼は、「僕は社内のムードを変えたいとは言ったけど、変えなくちゃいけないのは社員であって自分じゃない」と答えました。なんと、組織風土変革の抵抗勢力は社員ではなく社長自身だったのです。
社長はトップのイスに座って3か月、先代が作ったそのイスの座り心地の良さに安住してしまったのでしょうか。結局、社長の「変わるべきは社員」という姿勢は覆らず、改革は制度整備に留まり中途半端なものに終わってしまいました。
実は冒頭の調査でおもしろい結果が出たと言ったのは、同じ質問を100人の経営者にした調査が併記されていたからです。「あなたの会社に変化は必要ですか」という質問に対する回答は、同じように99%の経営者が「変化が必要」と答えたのですが、「最も変化が必要なモノは何ですか?」という問いに対する一番多かった答えは、「組織風土」ではなく「社員」だったのです。私はこの結果を見て、T社長の言動を思い出したと言うわけなのです。
社員も社長も、今の自社に「変化は必要」と思っていながら、社員は「組織風土=経営姿勢=社長」に変化を求め、片や社長は「社員」に変化を求めている。共に「変化は好ましい」と感じていながら、モノの本にあった通り「自分以外」とも無意識に感じているわけです。しかし、このままどちらも動かないままなら、「変化」は永久に起きないでしょう。結論は簡単です。上に立つ社長が変わらないなら社員は変わらない、組織をリードする社長が変わらないなら風土は変わらないのです。
Y社には未だに会長時代と同じ、社内には「他人頼みでやる気を感じない」空気が脈々と流れ、社長は「できることなら社員を全員取り変えたい」とぼやいていると聞きます。世に、社内に「変化」を求めど「変わらない」とお悩みの社長は多いのですが、ご自身が「変化」を拒否していないか、まずは自問自答いただくことがお悩み解消の近道かもしれません。(大関暁夫)