営業は「教える」ものではない 「背中で見せる」の重要性

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当初の「同行訪問」がうまくいかなかった理由

   3か月ほどして、再び社長に会うと開口一番こう言いました。

「大関さんの言う通りに、部長に担当者との同行訪問をやらせてみたもののサッパリだよ。同行訪問に効果はない。時間の無駄だよ。Y部長には、以前のように通常の営業活動に専念してもらおうと思う」

   ちょっと待って下さいよ。短期間で劇的な効果が出るか否かは別にしても、全く効果がないとは思えなかった私は、同行訪問が中止になる前にY部長がどのようなやり方をしているのか聞かせてもらうことにしました。

   効果が出ない原因はすぐに分かりました。部長は担当者の訪問先に同行して、そのやり取りを見てアドバイスをしているというのです。冒頭の飲料メーカーの上司と同じやり方ですが、これではダメなのです。同行訪問最大の目的は、動物学で言うところの「刷り込み」です。雛鳥が親鳥の歩き方や泳ぎ方を見よう見まねで身につけるあれです。私の説明も悪かったのですが、私が意図した同行訪問は、部長の担当先でも担当者の訪問先でもかまわないので、とにかく部長の営業スタイルを見せて担当に学ばせることだったのです。

「言われてみれば確かにそうでした。私が当社の営業のやり方を身につけたのも、創業当初社長と一緒に新規開拓であちこち回っている時に、社長のお客様とのやり取りから学んだものだったわけですからね」

   Y部長から社長にお願いしてもらい、やり方を変えてもうしばらく同行訪問を続けることになりました。半年ほどで成果は目に見えて現れたようです。その後、部長は徐々に自身の担当先を担当者に移し順調に会社の規模も拡大して、今では管理・指導に専念する取締役営業部長におさまっています。

   営業は教えるものではなく、見せるもの。覚えておいて損のない営業チーム育成のポイントなのです。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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