「ダメな営業」を嘆く社長へ贈る 結果を出す「確率論と心理学」

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   「どうしたら営業部隊の実績が上がるのか」「営業担当が育たない」「営業の定着率が悪い」・・・。社長の皆さまから様々な機会にお悩みを耳にしている中で、最近一段と多いと感じるのが営業に関するお悩みです。

   経営者として景気が回復下で気になるのが、自社業績の伸びと売り手市場に転じた人材定着率ということなのかもしれません。営業実績向上と営業定着率の改善はどうしたらできるのか、少しお話ししておきます。

行動量を増やす、知識を規定し均一に刷り込ませる

成績が上がらない
成績が上がらない

   営業実績には次の法則があります。


営業実績=営業活動量×営業知識


   この法則は、私自身のプレイヤーとしての経験則と管理者やアドバイザーとしての業種を問わない数多くの優秀営業マンの行動分析から導き出したものです。かのドラッカー氏もまた、「営業は、お客様・取引先と会う回数・時間を増やさないことには成果は上がらない」「営業は常にプロであるのだと認識し、プロは一生学び続け成長し続けなければならない」と、その活動量と知識の重要性を説いています。

   私は「営業部隊の実績が上がらない」と嘆いている社長方には、まず何より「営業部隊個々人の行動量を増やすこと」「御社の営業知識を規定し、営業担当全員に均一に刷り込ませること」を強くお伝えするようにしています。

   「行動量なんてそんなに簡単に増えるものなのかい?勤務時間を長くするなんてことしたら、今時はブラックって言われてしまうんじゃないか」。先日も、とある集まりで雑談した機械商社のH社長からこんな質問を受けました。

   「勤務時間は従来通りです。朝10時から午後4時までが営業のゴールデンタイム。毎日この時間内に各営業担当がどれだけ有効な商談をセットできているか、がすべてです。営業担当が計画的に動いているか否かの月次および日時行動管理、営業デスクワークの社内アウトソーシングによる外訪活動支援、訪問アポイントの非効率チェック、社内会議の削減効率化等々を徹底すれば、今の営業活動量は少なくとも5割増し以上にはなるのです」

「古い、新しいは関係なく、むしろ効率的」

   H社長も含めてたいていの人はこんな話をすると、「俄かには信じがたい」という顔をするのですが、ほとんどの企業で一部の優秀営業マンを除いては十分な営業活動量が確保できていない、それが私が多くの企業で見てきた実態なのです。

   「まずは量、動けって言うのは、なんか古くないかい。僕はどうも効率的じゃないように感じるね」。別の機会に、同じように営業のお悩みを打ち明けた公共向け設備企画のN社長は、私の話にこうぶつけてきました。

   営業は確率論であり、また心理学であるのです。平たく言えば、売り込み先との接触機会を増やすことは、「出会いがしら」が生まれる回数も多くなると言う意味で確率論。相手との面談回数を増やすことは、「熟知性の法則」により相手サイドに親近感が湧き、接触機会の少ないライバルよりも圧倒的に優位に立てる、という意味で心理学なのです。「古い、新しいは関係なく、むしろ効率的です」と私は自信をもって申し上げました。

   次に営業法則もうひとつの柱「営業知識」です。営業はやみくもに訪問件数を増やせばいいわけではなく、やはり一定水準の「知識」がなければ、せっかくチャンスを作っても成約はスルリと指の隙間から抜け落ちてしまうでしょう。そうならないためには、営業マン全員の「知識」水準を一定以上に上げなくてはいけません。「知識」とは具体的に、自社商材、ライバル商材、ターゲット情報、市場環境、経済動向、一般常識・・・等々ですが、それぞれについて、どの水準まで何を身につけるのかの基準を明確化、定義化することが必要なのです。

「知識」化する

   それともうひとつ重要なことは、営業スタイルも標準化して「知識」化することです。具体的には、優秀営業マンや経営者の経験を入念に検証して、成約に結び付く営業の行動パターンを自社の営業スタイルとして「知識」化するのです。営業スタイルは皆が同じように実績を生み出すための基準であり、「知識」の中で最も重要なものです。これを文書化し、他の定義化された一般「知識」と併せてまとめれば、営業マニュアルが完成します。

   「営業は個々のスタイルでやってこそのもの。営業マニュアルなんて、担当者の個性を殺すだけじゃないのかい」

   会員制サービス提供企業K社の営業改革のお手伝いをした際に、ナンバー2であったY副社長は、我々の提案にこう難癖をつけて反対しました。

   個々のスタイルで行動できるのは、一定の水準に達した者のみであり、まずは全員が決められたやり方に従って一定水準クリアを目指すことが優先です。言ってみれば、「守・破・離」の精神。まずは言いつけを守る「守」。それが難なくできるようになって初めて教えをアレンジする「破」、さらに進んで自己のスタイルを確立する「離」に至れるわけなのです。

   ちなみにK社の営業担当は臨時雇用が大半だったのですが、「営業マニュアル」を作ったことで新規就業者が「まず何をやればいいのか」が分かり、懸案だった離職率も圧倒的に下がったのでした。営業のマニュアル化は、定着率向上による採用コスト削減にも大いに役に立つのです。

   私のやり方が営業チーム改善に向けた唯一無二の方法ではありませんが、多くの企業で実績を残しています。営業でお悩みの経営者の皆さま、ぜひ参考にしてみてください。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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