損害賠償請求が考えられるケースもあるが、今回は・・・
なお、退職をためらうケースの一つとして、会社を辞めると何らかの制裁的な金銭の支払いをしなければならない旨の合意がされている場合があります。例えば、退職した場合には、在職中に受けた研修費用を遡って支払わなければならない、と雇用契約で定められているような場合です。
ここで知っておきたいのは、「賠償の予定の禁止」の規定(労働基準法16条)です。そもそも、労働者にはどの会社で働くかを決める自由がありますが、会社を辞めた場合に制裁として金銭の支払いをしなければいけないとなると、辞めたくても辞められないということになってしまいます。そこで、働く人の退職の自由を守るためにこのようなルールがあるのです。
ただし、労働基準法第16条は「あらかじめ」定めることを禁止するもので、実際の損害額を賠償させることは違法ではないとされています。突然退職した労働者のために新たに求人費を使った場合、その費用を辞めた人に請求することもできなくはありません。とはいっても、実際に裁判等となった場合、突然の退職と求人費用の発生との因果関係の証明も行う必要があり、認められないケースが多いようです。求人費用の他にも会社に損害が発生することはありますが、多くの場合、損害賠償請求できないのが実情です。
今回のご相談者の場合は、会社から損害賠償を請求されることはないと思いますので、安心して実家に戻り、家業を継いで下さいね。
ポイント2点
●雇用期間の定めがない場合は、労働者が辞めるということを会社に伝えてから2週間が経過すると雇用契約は終了。雇用契約の期間が定まっている場合(1年以内の場合)は、過失があったら損害賠償される可能性はあるが、労働者は「やむを得ない事由」があるときは、会社の了承がなくても、会社を辞めることができる。
●口頭で伝えても構わないが、後々トラブル防止のため、書面の形で会社に提出するほうがよい。提出日と氏名を記載し、「○年○月○日をもって退職いたします」と明記する。また、コピーを手元に残しておくことも大事。