社内改革を阻むのは・・・実は経営者自身? 老害と役員定年を考える

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   「改革への着手を一旦ストップして欲しい」。クライアント先R社の社長から最近こんな申し出がありました。改革着手を直前に控え、前日まで一緒に何の問題もなく実行プランの最終詰めをおこなっていただけに、「なぜ、急に」という驚きがありました。

   理由はこうです。

「よくよく考えると急激な改革への着手は、社員の動揺を招くのではないかと心配になった。社員からの意見聴取や改革に向けた考え方の浸透をまずやることが先かと。一旦プランを白紙に戻して、地ならしにじっくり時間をかけてから進みたい」。

改革プラン実行直前でストップ

改革したいのに・・・
改革したいのに・・・

   今回は、全社員への意識調査のアンケートをスタートで実施し、社員の皆さんの考えをまず把握した上で改革を進めるプランでしたので、社長の言う懸念はさほどないと私は認識していました。さらに、それをベースに徐々に段階を踏んで改革を進めていくことで社員の理解も協力も得られると、これまでの経験からは確信をしていました。しかし、当の社長が「不安だ」というのですから、こちらが一方的に押し切るわけにはいきません。

   このような改革プラン実行直前でストップがかかるケースは、決して珍しくはありません。記憶ではこれまでにも2、3度例がありました。今回、私の進め方のどこに問題があったのかを検証する必要もあり、過去の事例も含めて様々なことに思いを巡らせていたところ、10年近く前の話ですが同じように改革着手を直前でストップされた経営者のことを思い出しました。

   その社長はHさん。当時は70代前半で事業承継が最大の課題でした。社内改革案は、次世代へのバトンタッチを念頭において、社内の管理体制、合議体制を刷新しつつ、創業の精神をベースに置きながらも新しい企業文化を根付かせていこうというもの。社長および後継チーム(ご子息とサポート役の取締役2名)と入念な打ち合わせを重ね、「さあ実行」という段になって突然H社長からのストップがかかったのでした。

   社長からは、こんな説明がありました。

「大関さんの考えには全面的に賛同しているし、やらなくちゃいけないということも十分分っています。ただ、どうだろうか。実行を目前にしたら、果たして今のうちの組織とは名ばかりの会社でそれをやってうまくいくものか、ちょっと自信が持てなくなりました。これは、これまでちゃんと会社を形づくってこなかった私の責任なのですが、改革実行に自信が持てるまで、しばらく時間をもらえないだろうか」

   「『いずれ』とお化けは出たためしがない」が私の当時の考えでしたから、この機を逃したら改革はできないと、私は猛烈にまず実行すべきを訴えました。しかし結論は覆らず。なんとも納得のいかないまま、一旦お手伝いから手を引くことにしました。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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