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どん底営業部を常勝軍団に変えたYES,BUT法

   では、学生が自己PR等を否定されたときはどうすればいいでしょうか。

   ここでお薦めしたい本が新潮新書の『どん底営業部が常勝集団になるまで』(藤本篤志)です。

   新潮新書は営業関連の本を多数出しており、同じ著者の『御社の営業がダメな理由』や『営業部はバカなのか』(北澤孝太郎)などもお薦め。

   さて、同書は生活協同組合コープさっぽろについて取り上げています。

   札幌市内では抜群の知名度を誇る流通企業ですが、ここで2軍扱いされていたのが、宅配営業部です。

   この宅配営業部のコンサルタントを任された著者が、2軍扱いだった部署がなぜ常勝軍団に変わっていったかをまとめたのが同書。

   常勝軍団に変わっていった理由はいくつもあるのですが、そのうちの一つがYES,BUT法です。

「まず相手の言葉は絶対に否定しないこと。その主張や説明を、ときおりうなずいたり、ほめたり、同意したり、うらやましがったりして、受け入れる。相手の話を全部聞くことも重要だ。途中で遮ったり、話の腰を折ったりしてはいけない。人間というのは、しゃべりたいことを全部しゃべると、心が満たされる。相手が全部しゃべりきって、心にゆとりができたタイミングで、ソフトに営業トークを展開していくのだ」

   この例として、歩くことを健康法としているお年寄りを挙げています。

「宅配は、僕にはまだ必要ないよ。健康のために歩いて買い物に行くことにしているんだ。人間は脚から老化するからね」

   ここで、先の例の学生のように自分の話をしたり、相手を否定したりした場合はどうなるでしょうか。同書には書いていませんが、私の身内などから想定してみました。

「いえ、単に歩けばいいというものではないでしょう。治安だって最近はよくないですし、危ないですよ。それにうちに宅配事業は2000種類も商品を扱っていますし、使っていただけると便利です」
「なんだ、貴様。人の健康法をバカにするのか。もういい、帰ってくれ」

   こうして契約が取れないことは明らかです。

   では、常勝軍団はどのようにして話を進めたのでしょうか。以下、同書からの引用です。

「歩くのは素晴らしい心がけですね」
「うん。そうだろ。あなたも歩いたほうがいいですよ」
「はい。ぜひそうします。でも、お米やビールのような重いものを買う時も、ご自分で運ばれているんですか?」
「ああ・・・、あれはけっこう腰に来るね」
「せっかくたくさん歩いていらっしゃるのに、腰を痛めて本末転倒になってしまわないように、重たいものだけでもカタログ購入をご検討してみませんか」

   どうでしょう、契約が取れる確率、相当高そうと思いませんか?

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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