「想定外」の不正を極力なくす 「固有リスク」の考え方とは

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   次のような質問をされたら、皆さんはどう答えるだろうか?

   「あなたの職場では、誰かが会社の現金や預金を横領してしまう可能性はありますか?」

   この質問に「いいえ」と答えた方は、その理由を挙げていただきたい。

   「うちの職場には、現金や預金のやり取りは一切ないから」という理由であれば、確かに横領が起きるリスクはゼロかもしれない。しかし、「そんな職場はない」と言えるのではないか。

どんな職場にもリスクはある

まさか、あの人が・・・
まさか、あの人が・・・

   もしかしたら、会社内に現金を一切置かない会社はあるかもしれない。しかし、どんな会社も少なくとも1つは預金口座を開いており、そこには毎日のように入出金取引が発生するだろう。それらの取引は、伝票を記入して銀行窓口で行うかもしれないし、キャッシュカードを使ってATMで行うかもしれないし、オフィス内からインターネットバンキングを通じて行うかもしれない。いずれにしても、誰かが資金を動かすことになる。

   「確かにそうだが、うちの職場の人間は、会社の現金や預金口座には一切タッチできない」という理由もあるだろう。しかし、どんな職場でも、出張旅費や備品購入などの立替え払いは発生するはずだ。経費を不正に請求すれば、それも立派な横領である。そう考えてみると、どんな職場にもリスクはあると考える必要がありそうだ。

   次に考えられる理由は、「うちの社員に限って」「私の部下に限って」横領などするはずがないという理由、または「うちはきちんとチェックしているから」というものであろう。

   しかし、世の中を騒がせる横領事件の多くは、周囲からはまじめと思われている人が、信頼を逆手に取ったり、チェックの甘さを突いたりして、人知れず何年間にもわたって行っていたというケースが多い。その結果、不正が発覚したときには、周囲は「まさか、あの人が」とショックを受けることになる。

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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