次のような質問をされたら、皆さんはどう答えるだろうか?
「あなたの職場では、誰かが会社の現金や預金を横領してしまう可能性はありますか?」
この質問に「いいえ」と答えた方は、その理由を挙げていただきたい。
「うちの職場には、現金や預金のやり取りは一切ないから」という理由であれば、確かに横領が起きるリスクはゼロかもしれない。しかし、「そんな職場はない」と言えるのではないか。
どんな職場にもリスクはある
もしかしたら、会社内に現金を一切置かない会社はあるかもしれない。しかし、どんな会社も少なくとも1つは預金口座を開いており、そこには毎日のように入出金取引が発生するだろう。それらの取引は、伝票を記入して銀行窓口で行うかもしれないし、キャッシュカードを使ってATMで行うかもしれないし、オフィス内からインターネットバンキングを通じて行うかもしれない。いずれにしても、誰かが資金を動かすことになる。
「確かにそうだが、うちの職場の人間は、会社の現金や預金口座には一切タッチできない」という理由もあるだろう。しかし、どんな職場でも、出張旅費や備品購入などの立替え払いは発生するはずだ。経費を不正に請求すれば、それも立派な横領である。そう考えてみると、どんな職場にもリスクはあると考える必要がありそうだ。
次に考えられる理由は、「うちの社員に限って」「私の部下に限って」横領などするはずがないという理由、または「うちはきちんとチェックしているから」というものであろう。
しかし、世の中を騒がせる横領事件の多くは、周囲からはまじめと思われている人が、信頼を逆手に取ったり、チェックの甘さを突いたりして、人知れず何年間にもわたって行っていたというケースが多い。その結果、不正が発覚したときには、周囲は「まさか、あの人が」とショックを受けることになる。