「保身」をはねのける毅然たる勇気が求められる
オーナー社長の「保身」はその思いが強い分だけ、命取りにもなり得るのです。S社長には、不祥事発生を社員のせいにせず、自身の経営者としての管理責任を正面から受け止める勇気、正直にすべてを打ち明ける勇気が必要だったのだと思います。「保身」から部下に責任を押し付けた勇気のなさ、「保身」から正直な対応を拒んだ勇気のなさが、最悪の結果へと導いてしまったのでしょう。その一挙手一投足がイコール企業であると言えるオーナー経営者にこそ、「保身」をはねのける毅然たる勇気が一層求められるのだと、私は実感しました。
メネジメントの名著、『ビジョナリー・カンパニー2』に、成功する経営者に求められる資質として「うまくいった時には窓の外を見て、失敗した時には鏡を見る」とあります。「保身」は、まさしくこの逆をいく行為です。世のオーナー経営者の皆さんには、繰り返し意識に刷り込んで欲しい一言だと思います。(大関暁夫)