就活暴走「バカ親」批判を超えて この「一手間」が親子を救う

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   今日のテーマは「困った親」です。「マイナビ15年卒就職モニター調査」(2014年1月実施)によると、親・親族の意見が影響したとの回答は44.3%(「影響がある」11.3%、「少しは影響がある」34.0%)。ほぼ半数が「影響する」と回答しています。

   「就職活動に際して、親・親族に望む協力」の項目では、交通費など金銭的援助38.2%、自己分析への協力11.8%、企業選択のアドバイス8.5%など具体的な内容が上位に来ています。

2位は「特に何も望まない」18.5%

心配なのよ・・・
心配なのよ・・・

   ここで注目したいのは、こうした具体的なものだけでなく、2位に「特に何も望まない」18.5%、4位に「余計な口出しをしない」10.8%と後ろ向きのものが入っていることです。

   この背景には、親の暴走、特に母親が大きな存在になっています。では、「就活暴走親」とはどんな存在なのでしょうか?

   親が就活において、ある程度の影響力を持ったプレーヤーとなったのは就職氷河期の2000年代から。「読売ウイークリー」2006年6月18日号には親子就活の特集が組まれていますし、以降毎年、親と就活の関連記事はどこかの雑誌で必ず掲載されるようになりました。最近だと、週刊新潮15年7月09日号で「30年前の常識は通じない!ご両親のための『就活』最新ガイド」が掲載されました。

   週刊誌や新聞だけではありません。就活生に欠かせないツール、就活ナビでも、マイナビは「親子就活講座」、日経就職ナビは「保護者版」、あさがくナビ(朝日学情ナビ)は「親カツ!!」と題する親向けページをそれぞれ開設しています。

   このうち、マイナビは、3月に「保護者のための就職活動勉強会 inマイナビ就職MEGA EXPO」を開催。

   入場料5000円と、それなりの額がかかるにもかかわらず、来場者数は「100人以上」(中日新聞3月31日)。

特徴は過保護・過干渉・無理解・押し付け

   さて、親については、「経済的なサポート、他人と比較しない、過干渉にならない」(マイナビ/項目は他7点)、「無知、無関心、押し付け、過保護・過干渉」(日経就職ナビ「やってはいけないこと」)、「過保護、過干渉、無関心」(あさがくナビ「親の就活3大NG」)など、似たような項目が並びます。

   このうち、無関心は、就活に全くタッチしないことであり、他の項目とは方向性が違いますのでここでは割愛。

   主だったところでは、過保護・過干渉・無理解・押し付けの4点でしょうか。

   概要をまとめると以下の通りです。

「過保護」・・・就活生の代わりに説明会出席、ES作成の代行、内定辞退の連絡など
「過干渉」・・・就活生への過剰な干渉・介入。プレッシャーのかけすぎ
「無理解」・・・我が子(学生)の就活観・企業選択の全否定
「押し付け」・・・自分の若い時の夢や就活観・企業選択への強要

   このうち、過保護は目立つこともあって、よく話題になります。ただ、企業によっては、「いやー、ウワサは聞きますけど、うちには出ませんね」というところも。大学の就職課・キャリアセンターでは過保護な親の話、よく出てきます。

   過干渉は、顔をあわせるたびに、「就活どうだ?頑張っているか?人並みに働いてくれればそれでいいんだ」と話す、これなんかは過干渉です。いくら親は何気なく言っているつもりでも、学生からすれば毎回言われていれば、感性があくびするどころか悲鳴をあげてしまいます。

   この過干渉に似ているのが無理解、押し付けです。

   学生の就職観・企業選びをネガティブにとらえるか、あるいは親自身のそれを絶対価値と信じ込むか、方向性の違いで分かれます。

「困った人は困っている人」

   親と就活の問題、これまで私も含めて記事の書き手やキャリアの専門家は親批判で終わるか、それか親に対して「無関心もよくないけど、過干渉などもよくないよね」という論調でまとめていました。

   それはそれで意味あると思いますが、では当の学生はどうか、というところに気付きました。

   今回は、学生の視点も含めて書いていきます。学生からすれば、理解してくれるはずと思い込んでいた親にあれこれひっかき回されるわけで、いらだったり落ち込んだりもします。私の記事を含め、親批判に溜飲を下げる学生もいるでしょう。

   そんな学生に、ソーシャルワーカー・社会福祉業界志望かどうかに関係なく、漫画『セーフティネット―コミュニティソーシャルワーカー(CSW)の現場』(原作・文:豊中市社会福祉協議会)に出てくる名セリフをお贈りします。

「困った人は困っている人」

   昨年、この漫画を初めて読んで、以降、脳裏に焼き付いて離れません。漫画ではホームレスや独居老人などを見捨てずに動くソーシャルワーカーが描かれていますが、ここでは割愛。

   親子の対立において、子の学生からすれば、自分の価値観などを押し付ける親は困った存在です。しかし、親からすれば我が子の就活が心配です。心配だからこそあれこれ干渉する、つまり困っている存在でもあるのです。

   その困りごとを解決できれば、物事は大きく前進します。

親の時代の背景を考える

   では、就活における親子対立で学生の側が困りごとを解決するためにはどうすればいいでしょうか。

   それは、親の時代背景を考えたうえで、現状や近未来がどう変わっていくか説明することではないでしょうか。

   学生からすれば、なんでそこまで、と思うかもしれません。が、困りごとを解決する、というのは「なんでそこまで」をやることです。その対象が、親なのか、会社の上司なのか、取引先相手か、その違いだけです。

   では、親はなぜ学生にとって、困ったこと=暴走してしまうのでしょうか。

   それは、親の時代の就活・社会人経験から話すためです。

   これが男性、かつ、採用業務などを少しでも担当している親ならまだそこまでひどくはありません。

   問題は女性、つまり、母親です。現在の就活学生の母親が20代だったのは、1980年代から1990年代にかけて。

   この時期はちょうど、男女雇用機会均等法制定(1985年)、総合職の誕生(1986年ごろ)、総合職の大幅な縮小(1990年代前半)、一般職の賃金差別訴訟の続出(1990年代後半)など、女性の働き方が大きく変わっていった時期です。

ネガティブな衝突が噴出

   この変動の過程では、ネガティブな衝突が至るところで噴出しました。

・総合職と同じ仕事をしている一般職のベテラン社員が総合職の新入社員と対立
・総合職なのに「どうせすぐやめる女子のくせに」と仕事が回されない
・男性エリート並みに優秀と喧伝された割に何もできず職場で冷遇された
・優秀な新卒総合職でも職場や管理職が育成できず(育成しようとせず)、管理職昇進に必要なスキルを身に付けていない
・総合職ながら一般職業務も担当させられ負担が大きすぎた
・男性社員や取引先のサークル(飲み会、ゴルフなど)に入れず、情報が入ってこない
・仕事が中心となり、プライベート(恋愛、趣味など)に時間が取れない

   他にもありますが、この辺で。

   こうした不幸な衝突を目の当たりにしてきた女性が現在、母親世代となっています。我が子、特に娘に対して総合職・営業職に対してどのような思いを持つか、容易に想像がつきます。

   もちろん、就活は学生本人が最終判断するものです。しかし、暴走した親と相対するとき、単なる感情論の応酬にならないことを祈ります。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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