前回に引き続き、スズキトップ交代関連報道をきっかけとした、事業承継がらみの話です。製造業C社のベテラン経営者H社長と雑談の時間をいただき、スズキ会長進退の話題から「私には会長の気持ちがよく分かる」「自社の遺伝子継承ができない限り、後継にバトンは渡せない」といった話でひとしきり盛り上がりました。
H氏はすでに70代後半。創業者で、社長歴はすでに50年に近付こうとしています。後継は50歳を越えた常務で実質ナンバー2の長男。他社で5年ほど修行をした後に自社に転じて早四半世紀を越えながら、バトンタッチのタイミングがなかなか見えてこないのが、ここ10年来のお悩みであるようです。まさしくスズキ会長の中小企業版と言えそうです。
「リクルートのDNAが脈々と生きている」理由
「常務はまじめによくやっているさ。技術も分かる、営業もそこそこできるようになった。だがどうも、経営に関する私の理念や思想が伝わっていないと言うのか、どこか歯がゆい。常務がそんな状況だから、社内にも浸透する訳がない。子供の頃から『お前は私の後を継ぐのだから、自覚をもって歩め』と言い聞かせてきたのですがね。彼が今後トップとして現場をまとめていくには、その点が解消しない限り社長に据える決断ができんのです」
同じ日の夕刻、C社常務と同じ50代IT関係の経営者Y氏と会食しました。Y氏は、総合人材企業リクルートの成長期に入社し、サラリーマン生活を20年ほど経験した後に独立して約10年。現在50人ほどの社員を抱え、eコマース関連事業を展開する成長企業の経営者です。コミュニケーションが不足がちになり、長時間労働なども重なって就労環境が悪いと言われて久しいIT業界にあって、組織運営の円滑さやES(従業員満足度)の高さが評判の企業でもあります。
「事業の作り方、魂の入れ方、組織や人の動かし方や育て方は、すべてリクルートで学んだ」と言ってはばからないY氏ですが、まさにリクルートのDNAが脈々と生きている感が伝わるお話を、次から次へと聞かせてくれました。