真新しいランドセルを背負った新小学1年生の姿にも、見慣れてきた頃。元気に通学・下校する様子は、とても微笑ましいですね。ところで、みなさんは、小1のお子さんをもつ「働くお母さん」たちがぶつかる、ある問題はご存じでしょうか。
それは「小1の壁」として知られています。ワーキングマザーたちは、子供が小学校に上がるまでは、就業時間に合わせて「19時過ぎまで」など、延長保育サービスのある保育園を利用するのが一般的。ですが、小学校では、15時頃に授業が終わってしまいます。いわゆる「学童保育」もありますが、「延長保育」はないのが通例。18時には閉まってしまうため、ワーキングマザーたちは、「小学生になった我が子を、一体どこに預ければいいの!?」と、悩んでしまうのですね。が、実はこの問題、「保育時間」だけのお話ではなく、もっと根深いというのが、今回のテーマです。
苦肉の策で塾へ通わせる親も
知人のワーキングマザー(Kさん)は言います。
「娘が小学校に上がる時、預かり時間が長い学童(保育クラブ)があると聞いて、他の市に引っ越したんですよ。うちの会社では、『時短』が認められるのは、子供が小学校に上がるまで。それ以降は残業もあるし、子供を預ける場所がないんです」(Kさん)
彼女が勤める大手企業のように、お子さんが小学校に上がるまでは「時短勤務」を認める企業は多いのですが、本当に大変なのは、小学校に入ってから。保育園には「延長保育」があったのに対し、「学童保育(放課後児童クラブ)」には、それがないからです。実は、筆者も幼いころ、学童保育を利用していました。「学童」は、子供にとっては楽しい場所です。学年が違う子たちが、みんなで宿題をしたり、おやつを食べたり。時にはケンカもしますが、そこで重要な人間関係を学んだ気がします。が、中には、学童保育クラブ自体がないエリアも・・・。Kさんいわく、苦肉の策として、塾や習い事を受講させる親も多いそうです。
さらに、職場では、周囲の心ない一言が、ワーキングマザーをモヤっとさせます。
保育時間の問題だけではない
Kさんが違和感を覚えるのが、同僚や上司の発言。「お子さんも小学生かぁ。大きくなって、随分ラクになったでしょう」・・・いえいえ、違うのです。Kさんいわく、子供が小学生になったからといって「ラク」になったなんてことは、「一切ない」。
「まず、揃えるものが多いんですよ。上履きに上履き袋、体育館シューズ、道具箱の中身も保育園の時より複雑になるし、体操着に体操帽子、体操袋、レッスンバッグに筆箱・・・ほぼ全部に名札がいる。よく、忘れ物もしますよ」(Kさん)
確かに、勉強にまつわる道具や、宿題も増えてくるでしょうし、苦労は多そうです。そんな彼女の発言を裏付けるように、昨(2014)年、取材をさせて頂いた「保育園を考える親の会」代表の普光院(ふこういん)亜紀さんは、こう言っていました。
「『小1の壁』は、保育時間の問題だけではないんです。保育園では自由に遊んでいられたのが、小学生になると、宿題や明日の準備など、課題が急に増える。子供には、自分で自分を律する力が求められるようになり、環境も変わって、それがストレスになる。これが本当の『小1の壁』なんですよ」(普光院さん)
なるほど、保育時間の問題だけでなく、幼い心に「自立するための負担」がのしかかるのが、小1の壁の本質なのですね。Kさんが、同僚から、「お子さんが小学生になって『ラク』になったでしょう」と言われて、モヤッとするのも分かります。
次回は、こうした「小1の壁」の打開策となる「学童保育クラブ」について、政府の取組みを見ていきます。とりあえず、筆者が政府の資料を見ての率直な感想は、「全然足りてないじゃん!」でした・・・。(北条かや)