以前、お手伝いをさせていただいた産業用機械商社N社の関係者から、同社破産整理のお知らせをいただきました。この手の話は時々ありますが、たいていはどこかのタイミングでの経営者の優先順位の間違いが悲しい結末に導いていると思っています。
私に連絡をくれたのは、N社の営業部長Tさん。正確には、昨年秋に同社を辞めていたそうなので元N社のTさん。私がお手伝いしていたのは約2年前まで。当初はリーマンショックで一気に降下した業績が景気回復傾向の中でも一向に戻らないとの相談を受け、業務効率化と営業強化をお手伝いし、徐々にその効果は出てきていました。ところがある時、社長からの申し出により私が手を引くことになり、その後は相次ぐリストラにより規模縮小を余儀なくされて、最終的には債務超過になり破産を申し出たと言うことのようでした。
勤務実態のない名ばかり同族役員
私がN社のお手伝いを始めたのは約3年前のことです。リストラ策としての削減と同時に前向きな取り組みとして営業チームの行動管理の見直しをおこないました。それが軌道に乗るのを見計らって、今度は受注構造が「リーマン」を境に大きく変わってしまったとの判断から、新規マーケット開拓策を追加策定しそれを実行に移しました。ところがその新プロジェクトスタートからわずか3か月という目鼻が立つ前に、社長は突然私に「一層の経費削減を優先実行する」と言ったのです。
賃貸物件の一部返還、出張日当の廃止、営業手当廃止と残業ゼロを原則とした勤怠管理の徹底をすると言うのです。私は新規施策取り組みで負荷がかかっている社員の士気への影響を考え、新プロジェクトスタート間もないこの段階で追加の経費削減策を実行することに反対しました。それともうひとつ。当初リストラ策を策定した際に、削減で手をつける優先順位に関し私の見解とは相反する社長の考えで押し切られていたので、仮に追加削減を実行するとしても優先順位を変えることがまず先であろうとも思ったのです。
削減に関する優先順位見解の違いとは、私は役員給与のカット、特に勤務実態のない名ばかり同族役員(母、妻、娘)の給与を真っ先に大幅削減するべきと強く進言したのですが、社長はこれを拒んだのです。結局、従業員給与には当面手をつけないということと引き換えに私が折れたのですが、オーナー一族の身入り確保を優先したリストラ策の策定であることは明らかでした。そして今回も、また同じことの繰り返しが行われようとしていたので、私は以前にも増して強硬にこれに反対したのです。