就活的に「僕の夢」は何がいいですか? 痛い学生の思考法と行動様式

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   今日のテーマは「就活中に痛い学生」です。

   本人からすれば、しっかり話をしているつもり。それが、採用担当者の視点からすれば学生によって痛々しく見えることもあります。

   では、痛い学生、痛くない学生を分けるポイントはどこにあるのか、見ていきます。

「これは不公平です!」

踊りました
踊りました

   就活は、大学受験一般入試と異なり、曖昧な基準によって内定の是非が判断されます。

   これをやれば正解、これができなければ不正解。

   という分かりやすさがありません。

   そこで、不公平と言えなくない側面が就活ではいくらでもあります。

   不公平さをどう乗り切るのかも含めて、就活と言えるでしょう。

   それをTwitterでつぶやくのはもちろんのこと、採用担当者に直接ぶつけるのは、良策とは言えません。

   ある企業で、第1次選考終了後、学生に対して、選考結果の通知方法について説明したときのことです。

   あるナビサイトの連絡メールを使うのですが、たまたまそのメールに対応できない携帯電話機種を使用している学生がいました。

   すると、出てきたのが、

「私の機種では選考結果を受け取ることができません。これって不公平ではないでしょうか」

言い方があるでしょ、言い方が

   これを聞いた採用担当者は、謝罪してこの学生に電話で直接知らせることを伝えて帰しました。

   が、内心では「やれやれ」。

   この機種、実はかなりややこしいやり方をすればメールを受信することもできました。

   百歩譲って、それが学生にとって相当な負担であり、企業側が考慮すべき問題だったとしましょう。

   それでも、言い方があるのでは、とこの企業の採用担当者は話します。

「学生の方から『受信設定が難しいので、お電話でお願いできませんか』など、申し出てくれれば、それで済む話です。それを一方的に『不公平』と断定されてしまうと・・・。この先、一緒に仕事ができるか、不安になってしまいます」

「ノートを見てください」と言われて見れば

   大学就職課職員や新卒応援ハローワークなどは就活生にとって頼りになる存在です。

   しかし、頼りすぎると、やはり痛い学生になってしまいます。

「就活ノートを見て、それでアドバイスをください」

   そう言われたのは、関東の中堅私大の就職課職員。

   開いてみると、

「初任給は最低30万円、夢が実現できる仕事がしたい」

   スポーツ紙の3行広告でよくありそうな文句と、簡単なスケジュールが書いてあるだけでした。

   ここから導かれる答えは、

「この学生は就活を何もわかっていない」

であり、勧められる方法は、

「とりあえず、就活ガイダンス、最初から受けてね」

くらいしかありません。

   私なら、そう言いますが、就職課職員は立場もあるので、やんわりと、卵とじのようにやさしく話しました。

   すると、

「でしたら、どんな夢がいいですか。また、その夢の実現のために僕は何をすればいいですか?」

   そりゃあ、あなたの人生なんだから、あなたが考えましょうよ、と就職課職員もそう言いたくなると、

「僕、考える作業が苦手なので教えてください」

   こうした学生、採用担当者からすれば、

「考える作業が苦手なら高い給料の正社員としては採用できないよね」

で、おしまいです。

   自暴自棄ならぬ自己放棄学生、現役学生にもいますし、新卒応援ハローワークや一般のハローワークとなると、さらに増加します。

「特に既卒、それも20代半ばから30代前半でこうした考える作業すら我々カウンセラーや専門家に任せてしまう人は多いです。当然ながら、就活はうまく行きません。自分で考えることをしないでどうするのか、と思うのですが」(新卒ハローワーク・元職員)

よさこい、箱根駅伝、早稲田祭に共通する痛さ

   最初、よさこい、箱根駅伝、早稲田祭の3つを並べられて、共通項があるのか、分かりませんでした。

   教えてくれたのは、商社の採用担当者。

「いずれも、大きく注目されるイベントです。これらに参加した学生は達成感を通り越して陶酔感が強すぎます。そうした学生は、話す内容が薄いか、思い込んでいるか、のどちらか。または、その両方です。うちからすれば欲しい学生ではないので落ちやすいです」

   確かに大きなイベントです。早稲田祭は、他にも総合大で規模の大きな学祭だと当てはまるでしょう。

   たとえば、こんな学生。

「私はよさこいソーランの××に参加。ずっと練習を続けることで、▽大会において、大賞を受賞することに寄与しました」

   みんなで踊るのがよさこいですから、そりゃあ、賞を取るのに「寄与」しているに決まっています。しかし、採用する側からすれば、▽大会の大きさも分かりませんし、みんなで踊ってそのために練習しただけでしょ、と考えてしまいます。

「私はよさこいソーランのサークルで渉外を担当、グループの露出を第1に考えて行動し、結果、地元テレビ局からインタビューを受けることになりました」

   テレビ局が番組編成上、使っただけのインタビューを手柄と言われても。

   他、いくらでも挙げられますがこの辺で。

有意義と思っていても、大したことなかった?

   こうした学生のどこがまずいのか。

   それをうまく説明している本が、『若手社員が育たない 「ゆとり世代」以降の人材育成論』(豊田義博、ちくま新書)です。

   以下、該当部分を引用します。

「『有意義な経験をしていると思い込んでいる』という傾向だ。本人達のインタビューでの発言を額面どおりに受け止めれば、もっと多くの学習をしていることになるが、子細に聞き込んでいくと、それは本人の思い込みに過ぎないということが多々ある」
「新たな環境に身を投じ、新たな人たちとの出会いを果たすのだが、実はその人たちは自分と似た人たち、同質的な集団だった。(中略)自身の存在意義を確立し、イベントのプロデュースで有能感を感じるが、それは先人の功績によってパッケージ化されたものであり、また、社会的意義が高いものであるからこそ、挫折や敗北とは無縁の世界になる。人工的に作られたテーマパークのような空間での経験が、現実への適応を阻害してしまうのだ」

達成感に酔いしれない慶応生

   かなりきついことが並んでいますが、実は同書からの抜粋部分、これは就活についてではありません。入社後の職場での成長と学生生活の関連を論じた部分(第3章)です。

   しかし、就活そのものに当てはめてもまったく違和感がありません。

   なお、同書は、表題からは就活とは全く無関係の新書です。しかし、書いている内容は採用・研修担当者はもちろんのこと、キャリア関連の大学教職員だけでなく、大学生も読んでほしい良書です。

   さて、よさこいソーランでも箱根駅伝でも早稲田祭でも、大きなイベントであれば、学生といえども準備が大変です。

   準備が大変であれば、達成感も大きいですし、陶酔感もあるでしょう。

   しかし、それをもって、就活でアピールしようとしても、痛いと言われるだけです。

   ところで、同じ大規模イベントである学祭でも、三田祭は採用担当者から警戒されていません。

「三田祭ですか?そりゃ、盛り上がりますけど、就活で無理に話して本当に役立つかどうかは考えますね。その場にいなかった人に感動を押し付けても迷惑ですし。僕らは結構醒めているんですよ」(慶応生)

   それくらいがちょうどいいようです。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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