融資は「将来」に対しておこなうもの
融資というのは、その会社の将来に対しておこなうものであり、過去に対しておこなうものではない―。これは銀行員としての若手時代に、私が融資のエキスパートであった上司から叩きこまれた融資の鉄則でした。
「なるほど」と社長は一応納得してくれましたが、どうも融資折衝には自信が持てないようでした。そこで、今回の設備投資を受けた事業計画書のブラッシュアップをお手伝いし、さらに秘策をひとつ耳打ちして支店の課長のアポ取りへと送り出しました。
結果は、万事オーライ。2000万円近くの投資額のほぼ全額を、無担保で借りることができたのです。
「本当にありがとう。担当者の上司が話は聞いてくれたものの、態度はかなり慎重で難しそうな状況でした。大逆転の決め手はアドバイス通りに支店長を捕まえたことでした」
私がした耳打ちは、支店長に挨拶したらぜひ一度会社を見に来て欲しいとお願いせよ、ということでした。審査が難航すれば、支店長は必ず現場を見たくなるはずで、B社の活気あふれる社内を見れば絶対に融資は応諾に傾くはずだと私は確信していました。支店長はこちらの思惑どおりにB社を訪問し、結果作戦は大成功だったのです。
融資判断は、迷ったら現場に答えを探せ―。これも同じ私の元上司の言葉です。現場の活気やそれを支える社員の元気は会社経営にとって大変重要であると、経営者はしかと肝に銘ぜよ、ということの裏返しでもあると言えるのではないでしょうか。(大関暁夫)