講演やセミナーの懇親会等で名刺交換をすると、私の元銀行支店長と言う経歴を知ってか「銀行から、スムーズに融資をしていただくコツがあったら教えてください」という質問をよく受けます。そんな折に、必ず話をする過去のエピソードを紹介します。
銀行を辞めて間もない頃の話です。「ちょっと相談に乗って欲しい」と、友人の友人であり、飲み仲間でもある機械組み立て業B社の40代二代目N社長から電話が。その時の声のトーンにやや元気がなく、どうやら重たいお困りごとに違いないと感じた私は、直接お目にかかってお話をうかがうことにしました。
支店長とは面識あり
社長の先導ではじめて足を踏み入れたB社は、こじんまりとした会社でしたが、オフィスも作業場も職場の皆さんが大変明るく職場に活気が感じられ、若い社長を中心によくまとまっているといった印象でした。
「うちは親父の死後、業績が芳しくないのですが、ようやく皆の努力と営業活動が実って大手さんから大きな仕事の声がかりをいただきました。ただその仕事を受けるためには、1000万円以上の設備投資が必要で、それは借入しない限り無理なのです。ところが肝心の借り入れが難しそうなのです。仕事が取れれば会社は安定しますし、逆に取れなければこの先、いつ終わりになってもおかしくない。困りました。何かいい銀行対策はないですか」
B社の直近は赤字決算で、かつ毎月の資金繰りも綱渡り状態でもあり、出入りの若い担当者にそれとなく借入を打診したものの、あまり反応が良くなかったのだと。ただ、銀行との取引は長く、先代の創業間もないころからのお付き合いだそうで、N社長自身も支店長との面識があるというのは、いざという時、折衝に使えそうな情報ではありました。もちろん、銀行取引の長さや支店長との面識があるだけで審査が通りやすくなるわけではありませんが、上手にそれらを使えば話を進める上ではプラスに働くと思ったのです。