厚生労働省は、解雇や賃下げなどの労働紛争の9割以上が金銭の支払いによって解決していたとの調査結果を、2015年6月15日に公表した。調査対象は、労働局によるあっせんが851件、労働審判が452件、裁判による和解が193件で、それぞれ2012~13年に結論を得た。
解雇や賃下げなどの「労働局のあっせん、労働審判、裁判上の和解における雇用紛争事案の比較分析」によると、トラブルの9割以上を企業側が金銭解決で済ませており、金銭解決の比率はあっせんが96.6%、労働審判が96.0%、和解が90.2%を占める。
「解雇の金銭解決」制度を検討中
解決金額はかなりバラつきがあるが、中央値でみると、あっせんは15万6400円、労働審判は110万円、和解は231万円となっている。
一方、不当解雇など雇用の紛争解決制度に関する海外調査の結果では、調査した9か国のうち、解雇に正当な理由を必要としない米国を除くドイツやフランスなど8か国で金銭解決制度を導入していた。
不当解雇と裁判所が認定した場合に企業が労働者に支払う補償金は、1~2年を上限とする国が多い。ドイツは賃金18か月分が上限。フランスは勤続年数が2年を超えている場合は6か月分以上としている。
こうした調査結果は、政府が導入を目指す「解雇の金銭解決」制度の具体化に向けた議論の材料となる。制度の検討は、政府が産業競争力会議で示した新たな成長戦略の骨子にも盛り込まれた。
一方、制度導入に対しては「解雇が容易になる」との批判もある。