日本では先日、日本vsイラクのサッカー代表親善試合が行われていましたが、同日同時刻、カンボジアではワールドカップアジア2次予選のカンボジアvsシンガポール戦が行われていました。
日本と同組になったカンボジア代表。史上初の1次予選突破で国内は盛り上がっており、会場にはとてつもない人数のファンが押し寄せました(4万人収容と言われるスタジアムに試合3日前から5万枚以上のチケットを売り、当日は検札を無視してチケットがない人がバンバンなだれ込んだため、6万人以上いたのではないかと言われています)。
100人以上に試食してもらう
私が経営しているサムライカレーでは、このワールドカップ予選でのスタジアムでの飲食物の販売権を正式にいただき、当日はカンボジア人サポーターであふれるスタジアムで物販をさせていただきました。
サムライカレーには現在、3人の日本の大学生が来ており、彼らにこのスタジアムでの販売の全てを任せました。そして、我々が彼らに出したミッションのひとつが、「スタジアムで売る前に、カンボジアの人たちに1番好まれる寿司を調査せよ」でした。
カレーライスはスタジアムでは食べにくい。以前からやっていたカレーパンに加えて、今売り出し中の寿司をだそうという作戦です。
カンボジアには当然、寿司文化はありません。生の魚を食べるなんてもってのほか。我々が思う「寿司」とは違う何かを提供することになりそうです。
サムライカレーとして、彼らに2つの機会を提供しました。ひとつは「知り合いの会社での試食会」、ひとつは「カンボジア人の親子連れで賑わう複合施設内での試食会」 この2つの機会を活かすも殺すも彼ら次第です。
市内でいろいろ視察したところ、普通の寿司を作っていても厳しいと考えた研修生は、「肉」「テリヤキソース」「シーチキン」「マヨネーズ」「マンゴー」などを使って複数の試作品を作ります。そして、会社で、施設内で100人以上のカンボジアの人にこれを試食してもらい、改良していくわけです。
アンケートを作ると「なんか、これの意味がわからない」
その際にアンケートを取ったのですが、これがまた難問。
会社でとったアンケートは、英語も通じ、比較的スムーズにいきました。朝に指摘された問題を、夕方には改善して持っていくなど、非常によい動きもできていました。
しかし、その後、複合施設内でとるアンケートで問題が生じます。
「なんか、これの意味がわからない」
複合施設内では、英語が通じる人が少ないという仮説の元、アンケート用紙をサムライカレースタッフにクメール語に翻訳してもらうことにしました。そのためにスタッフにアンケート用紙を見せたところ、この内容が理解できないということでした。
理解できなかったポイントは2点
1:「(5)Very Good(4)Good(3)・・・」といったように5段階評価の数字を書いてもらう形式にしたのですが、「5」の箇所に○をつけたらVery Goodであるという概念がよくわからない
2:項目に、味、見た目、量などの項目を作ったが、料理を評価するのになんでそんないろんな項目があるのかよくわからない(いい料理か悪い料理かどっちかでしょ)
彼女にもきちんと説明すれば理解してはもらえるのですが、アンケートを取る際に、一人一人にきちんと説明するのは時間的に不可能。さて、どうしたものか。彼らが考えたアンケート用紙は、これでした=写真下=。
カンボジア人が大好きなFacebook。ここで使用されている顔文字なら誰でも意味がわかります。英語でもクメール語でもない顔文字。これなら説明の必要はないのです。
聞くことも最小限にとどめ、この料理がいいと思うか、悪いと思うかと、価格が高いか安いかだけ。これならみんな明確に答えてくれそうです。
さらに、年齢や性別を彼らに書かせると時間がかかるので、あえて日本語表記にし、アンケートをとる研修生が自分たちで書くようにしました。
そして、実際に会場でアンケート。
寿司といいながら、カンボジアの人たちが好きな肉を前面に見えるようにした「サムライロール」はなかなか好評で、たくさんのカンボジアの人たちが立ち止まって食べてくれます。そして、アンケートもきちんと答えてくれています。ただ、彼らは基本的にいい人なので、評価は高い方に偏りがちです。
創意工夫で「壁」を乗り越える
そこで、また研修生は工夫をはじめます。
「これとこれ、どっちが美味しいと思う?」ということを聞いて、人気の順位を確認したり、アンケートに書かれた点数だけでなく、食べたときの表情を見て、我々から見た判断を付け加えたりする、などです。
我々が当然だと思っていることが、外国人に通じるかはわからない。
数字をとったとしても、その数字が正確な結果を示しているとは限らない。
だけど、そんな状況下でも、可能な限り彼らを知ろうと工夫をすることが大切なのです。今回のアンケートでも、項目数自体は充分とは言えず、まだまだ改善の余地はあります。でも、こんな短期間で少なくとも「どの試作品が受けたか」「それぞれの改良点はどこか」「価格はどれくらいにすべきか」のあたりをつけることはできました。そして、その成果もあって、100個以上用意した寿司は、会場で見事完売!どたばたを繰り返しながらも、何とか成果を出すことはできたのです。
異文化の人たちとのコミュニケーションは難しいです。
それは、言葉の問題だけではなく、相手がわかっていること前提で話してしまう常識が異なっていることが原因です。
でも、一度「常識が違う人がいる」ということを体験すれば、創意工夫によってその壁は乗り越えられるのです。
今週は、2試合目のカンボジア-アフガニスタン戦が行われ、11月にはカンボジア-日本戦も行われます。さらに、現地の人たちへのコミュニケーションを行い、もっと売れるものを作って、スタジアムを席巻して欲しいと思います。
このように、カンボジアの人たちの施行を知るための調査を体験する海外研修プログラム「サムライマーケティングチャレンジ」をカンボジアで開催しています。1-2週間の研修プログラムで、個人・企業研修どちらもご参加いただけます。
2015年6/20(土)に新宿で説明会も行いますので、ご興味のある方はぜひいらしてください。
(森山たつを)