あきらめなかった日大生、バイトネタで逆転
指定校制度があっても、併願を認める大学も戦前からありましたし、自由応募を認める企業もありました。
現在よりは学歴差別が激しかったことは確かですが、そんな中でも逆転をさぐる学生はいました。
読売新聞社・編の『応用就職戦術』(1931年)には、アルバイトネタで東京瓦斯(現・東京ガス)に逆転内定した学生のエピソードを掲載しています。
採用9人に対してに応募は難関大生など300人。ダメなら、焼き鳥屋でもやろう、と思った学生は屋台のことを調べてから面接に行きます。
面接の口頭試問では、
「産業合理化とは?」
の質問に対して、
「まあ、淀橋の停留所から試験場へ来るまでに、余計な回り道をしないで近道をして来るようなものです」
「ガスにはどんな種類があるか」
との根本の質問には、
「中学で習いましたが忘れました」
ガス会社を受けるのですから、ガスの種類くらい知っておけよ、という話です。
ところが、面接官から
「露店商人の使うランプは?」
との質問には、ちゃんと回答。何しろ、焼き鳥屋を始めようとしていて、そのことは調べてあったのですから。
本人曰く、「そいつは俺の専攻科目」。
「アセチリン・ガス(本文ママ)ですが、最近は電気に押されてきています(中略)たとえば神楽坂や銀座の固定的な露店商人は電燈をつかっていますが、各所の終日露店商人は九割までアセチリン・ガスを使っていますし。しかし、ガス会社がこの方面に着眼して手をのばしたら伝統と競争しても、なお十分に勝算があることは火を見るより明らかです・・・」
かくて、「専攻科目」を滔々と解説したとはつゆ知らない面接担当者は、高評価。逆転内定した、とあります。