良い意味でのプレッシャーに
先述のとおり、これまでの公表基準は
「是正勧告を受けながら、改善せずに書類送検まで至った企業」
であった。しかし、大企業は公表によるインパクトがより大きいため、是正勧告時点で是正対応してしまう。是正対応すること自体は良いことであるが、その裏には勧告を受けるまで至ってしまったブラックな実態が確かに存在していたわけだ。
従ってこれまでは、「是正勧告を受けていながらもその事実が報道されない『隠れブラック大企業』」が、多くの人に知られないまま多数、存在していたことになる。
今回の新方針により、是正勧告を繰り返した時点で送検前に公表となるため、そのような隠れブラック企業が炙り出されるというわけだ。これは進歩といってよいだろう。
同じ違法行為の報道があっても、全国展開している大手企業のほうがマイナスの影響は大きい。「ブラック企業の社名公表」と聴いて皆さんが真っ先に思い浮かべるであろう某牛丼店や居酒屋チェーンに限らず、流通大手企業や運送業者、グローバルに展開している大手メーカー等でも同様の是正勧告を複数受けており、「社名を公表されたら一大事だから、本気で改善せざるを得ない」という良い意味でのプレッシャーになることだろう。