「隠れ」ブラック大企業をあぶり出せ! 厚労省「社名公表」新方針のインパクト

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「中小企業は対象外」に疑念の声も

   しかし、今回の新方針では、企業名公表に至る「一定の条件」がかなり限定的なのが気にかかる。

・複数の都道府県で事業を展開する社会的に影響力の大きい企業で
・残業代不払いなど労基法違反があり
・1か月当たりの残業、休日労働が100時間を超え
・1事業所で10人以上(または事業所労働者の「4分の1」以上)の労働者に違法な長時間労働があり
・概ね1年間に3か所以上の事業所で違法状態が確認された場合

   しかも、社員数300人以下の中小企業は対象外である。

   確かにニュース価値はあるかもしれないが、そもそも日本では企業数でみても労働者数で考えても、中小企業が圧倒的に多い。また多くのブラック労働が行われているのも、それら中小企業である。より裾野が広く、問題の根が深い中小企業まで対象にならないことには、「ブラック企業撲滅」に対して本当に実効性がある対策とならないことを懸念している。

   とはいえ、メリットもある。

   このニュース報道を受けて、筆者も巷の反応もウォッチしていた。基本的には厳罰化の方針を支持する一方で、「大企業限定という時点で骨抜きではないか?」「中小の違法企業はどうする?」といった疑念の声も多かったようだ。

   筆者としても上記表明のとおり、最終的にはすべての法人で労働法が遵守されることが理想であり、違法企業に対しては無条件で社名公表すべきと考えてはいるが、まずは大企業からスタートしていくことが現実的であるとも認識している。

   なぜなら、「是正勧告を数多く受けていながら、世間からはその事実を知られていない大企業」は実際多かったからだ。

新田 龍(にった・りょう)
ブラック企業アナリスト。早稲田大学卒業後、ブラック企業ランキングワースト企業で事業企画、営業管理、人事採用を歴任。現在はコンサルティング会社を経営。大企業のブラックな実態を告発し、メディアで労働・就職問題を語る。その他、高校や大学でキャリア教育の教鞭を執り、企業や官公庁における講演、研修、人材育成を通して、地道に働くひとが報われる社会を創っているところ。「人生を無駄にしない会社の選び方」(日本実業出版社)など著書多数。ブログ「ドラゴンの抽斗」。ツイッター@nittaryo
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