独立する部長が「開発チームごと」引き抜き こんなこと許されるのですか?

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弁護士解説 競業避止義務違反として、懲戒処分の対象となることも

   会社は、コストをかけて社員を大切に育てています。ただでさえ優秀な社員に抜けられるのは痛手なのに、まして今回のように新システム開発中の一斉引き抜きの話ともなれば、会社は怒り心頭ですよね。このような引き抜きトラブルは、特に退職後に明らかになって問題になることが多いのですが、今回の引き抜きは、違法と判断される可能性があります。

   そもそも、従業員には退職の自由があり、憲法上も職業選択の自由が保障されているので、転職や新会社の設立は自由にできるのが原則です。

   とはいえ、在職中の従業員は、会社の指示に従って誠実に働く義務を負い、さらに在職中に会社業務と競合する業務を行ってはならないという競業避止義務を負うと考えられています。

   在職中の従業員による引き抜きが競業避止義務違反とされるかは、ケース・バイ・ケースですが、在職中から競合会社の設立準備を行ったり、引き抜き行為を積極的に行ったり、競合会社に秘密情報を漏らして便宜を図ったりするなど、使用者の利益を著しく損ねる悪質な行為は、競業避止義務違反として、懲戒処分の対象となったり、退職金の減額・没収事由とされたり、損害賠償請求をされることがあります。

   今回の引き抜きは、会社の規模、待遇や細かい事情は不明ですが、部長は社運をかけた画期的な新システムの開発を任された責任者なのに、虎視眈々と計画的かつ秘密裡に競業会社設立のための引き抜きをしています。さらに、退職予告はしていますが、新システムは完成予定が数か月後に迫っているにもかかわらず、チーム全員が一斉退職となれば、代わる人員を確保する十分な時間的余裕もなく、業務に莫大な支障を生じると考えられ、極めて悪質な引き抜き行為として違法と判断される可能性がありますね。

岩沙好幸(いわさ・よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼っている。「弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ」を更新中。編著に、労働トラブルを解説した『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。
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