「仕事は見て盗むもんだ」・・・新人の頃、上司からこんなことを言われたという人は少なくないだろう。そうやって教育された人の中には、部下や後輩ができた今、同じように「見て盗め!」と言っている人もいるのでは?
ネット上では近頃、若手社員から「そんな考え方古い!」「ちゃんと教えてよ!」との声が上がり、「見て盗め」派との間で議論になっている。
「見て覚えるとか、盗めとか、逆効果じゃない?」
Q&Aサイト「Yahoo!知恵袋」に、「仕事は『教わるな、盗め』は古いと思いませんか?」という質問が投稿された(2015年5月16日)。
投稿者の上司がまさにそのタイプで、さらに「ポンコツ」と呼ばれながら3年ほど経過し、今ようやく1人で仕事が回せるようになってきたという。
そんな投稿者も3人の後輩を指導する立場に。「教わるな、盗め」という「アホらしい指導方法」はやめて、「基礎をしっかり丁寧に教え込み、叱る褒めるを半々くらいで新人を育ててみ」たそうだ。
上司からの「それでは自主性が伸びない」「責任感が育たん」という言葉を聞き流して自己流の教育を続けたところ、「新人達はメキメキと成長し、2年経つ頃には1企画のまとめ役になるほど仕事ができるようになりました」。
上司の言葉とは裏腹に自主性や責任感も育ち、今では自分から仕事を見て盗むようになったという。
「もちろん彼らの頑張りと、才能?あってのことですが、やっぱり僕が上司に受けた指導法よりも、最初に丁寧に教える指導法の方が良かったように思いました」
上司にはいまだに、「あいつら(新人達)はたまたま賢かっただけ。□□(私)は下に甘い」「先が心配だ」と言われているが、内心「あんたが古いだけだ」と思っているとか。
「やはり新人教育にあたり、見て覚えるとか、盗めとか、正直もう古くて逆効果のように思うのですが、みなさんはどう思いますか?」
と意見を求めている。
「盗め」派も「教えて」派も納得する指導法があった!?
回答欄には、
「おっしゃる通りです。『教わるな、盗め』、は古いです。業務を標準化して、基本的なことは誰がやっても同じことができるようにし、それを前提としたうえで、より高いレベルの仕事を考えることが、発展的な仕事の仕方だと思います」
「昔の職人ならそれでも良かったのでしょうが、私も、古いなあと思います。基本的なやり方は教えて、いろいろな人の、良いやり方を盗むのが良いかと思います」
と、投稿者に賛同する声が上がる一方、
「人から押し付けられた教えより、自分で考えて身に付けた仕事のほうが為になる、と上司の方は言いたかったのではないでしょうか?学校の勉強でも同じで、先生から教わった事など頭には入りませんが、自分から積極的に興味を持って学んだ事は身となり花になりませんか?」
「私は見て盗み取るって教えは好きです。一つのやり方しか教わることが出来ないよりかは、色々な人のやり方を見て学ぶ方が経験になったからです。というか、仕事の解決方法が幅広くなるって思います」
など、「見て盗め」派の書き込みも寄せられている。
「見て盗め」派と「しっかり教えて」派、相容れないように思えるが、両派が納得できそうな解決法が、コラムサイト「All About」に掲載されている(07年5月3日)。
コーチングの専門家・宇都出雅巳氏が、「部下に仕事を観察させて、そこで気づいた仕事のポイントをメモしてもらう」というやり方を提言。
「部下がどれだけ、どのように学んでいるかがわかる」「上司自身も気づかなかった仕事の新しい見方が得られる」「部下が集中して仕事を観察するようになる」「部下自身にとってわかりやすいマニュアルができる」
という4つのメリットが考えられる、として、「『見て盗め!』だけの教育から、部下と一緒に知識を創造し、組織を成長させる教育に進化していきましょう!」と呼びかけている。(MM)