おじさんの「ユルさ」に癒やされる
多くの大企業には、「郵便室(郵便ルーム)」と呼ばれる部屋があります。そこには、会社に届いた郵便・宅配便の受け取りや仕分け、発送、社内便の対応などを手がける担当者がいます。最近では業務全体をアウトソーシングし、派遣社員やパートさんが郵便物の仕分けをしている会社も、多いようですね。新卒のN子にとっては、毎日2回、郵便ルームへ赴き、社外に出す郵便物を持って行ったり、自分の部署に届いた荷物を受け取ったりするのが、仕事のひとつなのです。
「うちの郵便ルームには、いつも同じおじさんがいるんですよ。派遣社員さんかな。もう60代近いんですけど、私の顔と名前を覚えてくれてて。単に、新卒の私が珍しいだけかもしれないけど、『N子ちゃん、今日は元気がないね』とか言ってくれて。この前つい、『仕事きついです』って愚痴っちゃったんですけど、『新人なんだから、あんまり無理しないで、適当でいいんだよ~』って、高田純次みたいなユルさで(笑)。なんか癒やされました」
毎日、ほんの5分ほどの会話ですが、N子にとっては、タテの関係(先輩)でもない、ヨコの関係(同期)でもない、「ナナメの関係」である「郵便ルームのおじさん」の存在が、癒やしになっている様子。彼女を見ると、仕事上の利害関係がない「ナナメの関係」にあたる大人がいることは、子育て期だけでなく、社会人になってからも重要なのだなと思います。そういう大人と話すことで、現実を客観視できたり、「もう少し頑張ってみよう」と思えたり。もし今、何かストレスを抱えているのなら、意識的に「ナナメの関係」にあたる人を探してみるのも、ありではないでしょうか。N子にとっての「郵便室のおじさん」のように、意外と身近な所にいるかもしれませんよ。(北条かや)