「男女平等」の考え方が広まってくるにつれて、業務の内容に男女差を付ける企業は減ってきている。例えば「お茶くみ」は、今では男女問わずやっているという企業も少なくないだろう。
そんな中、いまだに「就業時間前の掃除は女性社員の仕事」という職場も存在するようだ。
「始業30分前、女性1人でトイレと事務所を・・・」
女性向け掲示板サイト「GIRL'S TALK」に、「サービス掃除」についての質問が投稿されている(2015年4月28日)。
この日、正社員面接を受けてきたという投稿者。従業員10人ほどの小さな会社で、投稿者が採用されれば女性社員は2人になるという。
面接では仕事内容の説明もあったが、「少し気になる点が」。
「始業時間は8時半からなのですが、その30分前、つまり8時から女性が掃除をするという決まりになっているそうです。2人なので、週替わりで1人で玄関、トイレ、事務所の掃除をするようです」
「しかも、サービスです」
始業前に掃除をすることには異存ないそうだが、「30分前、しかも女性ひとりですることなどは今まで経験がありませんでした」と違和感を覚えているようだ。「これは、普通として受け入れるべきでしょうか?」と、意見を求めている。
コメント欄には、
「何故女性だけ?全員で持ち回りで、この日は早出。とかだったらいいのに」
「まあ、しても良いですけど8時半からしますかね。30分も掛かるならそれは最早、仕事ですもん」
「自分達が使う場所なので、30分早くきてサービスで掃除をするのは当たり前だし受け入れられると私は個人的に思います。ただ、なぜ、女性のみで1人なの?最初に感じた違和感って後々大きく響いてくるので、私だったら辞退してしまうかも」
と、やはり「女性だけ」「30分もサービス掃除」という点に異を唱える書き込みが多い。
「男女雇用機会均等法上の問題」が・・・
さらに「こんな女性だけの仕事をやらされた」という体験談も寄せられている。
「以前働いていた会社は、同じように女性だけする仕事がありました。朝はタオルの洗濯、お湯のセット、台拭きなど。昼はお茶出しと、その後のコップ洗い。あとは、鏡開きの時のぜんざい作りとかもありました。ちなみに、男性職員と同じ職種です。その後転職し、あの会社は普通じゃなかったと分かりました。今考えると、とても男性目線の会社だったと思います。辞めて良かったです」
女性の苛立ちはもっともに思えるが、企業側は「昔からこうやって上手く回ってるから今さら変えるなんて・・・」と思ってしまうかも。しかし、その考えは危険だ。
横浜市の「小澤社会保険労務士・行政書士事務所」のサイトでは、ある会社の労務担当から受けた相談として、こんなケースを紹介している(03年10月3日)。
その会社では女性社員が当番制で、始業の15分前には出勤し、事務所の机の雑巾がけとお茶の準備をしていた。特に何の疑問もなく続いていた慣習だったが、新しく入社した女性社員から「当番で定められた日は必ず始業時刻の15分前に出社し、雑巾がけとお茶汲みを行うことが義務付けられているのであれば、早出出勤に当たるので、その分の手当を支払ってほしい」と言われた。今まで手当を支払ってこなかったのでこんな相談をされて戸惑っている、という。
解説では、「直接人事や労務担当の社員が指示していなくても、このような(雑巾がけやお茶汲みを)容認していた事実は『黙示の業務命令』があったとみなされたり、早出出勤に対する『黙示の承認があった』とみなされる」として、「この場合早出出勤に対する給与の支払い義務は生じると考えて良いでしょう」としている。
さらに女性だけが行っている点については、「男女雇用機会均等法上の問題があると云えます」。
「庶務の仕事をしている者について(男女の区別なくという意味です。)早出出勤による掃除とお茶の準備をさせるというのであれば、その早出出勤による業務に対する給与の支払いさえ行えば問題にはなりません」という改善例を提示している。(MM)