相手に迎合するような言動をしてはならない
最後に「問3」(不正犯した者に一切言い訳をさせてはならない)は、「×」が正解である。
本人が不正をしたことを認めたならば、自白を促すためには、本人に「逃げ場」を与え、自らの不正行為を正当化する余地をつくることも有効な手段となり得る。例えば「△△さん、これは決してあなたの私利私欲のためにやったわけではないですよね。業績不振の▲▲部門を何とか立て直したいというあなたの責任感がそうさせてしまった。その点は理解しているつもりです」などと言うことにより、相手はある程度体面を保つことができ、不正を犯すに至った心理を素直に話しやすくなるだろう。
不正検査士マニュアルでは、時には会社や上司を悪者にするのも一考だと書いている。例えば「何が何でもコスト削減、赤字はまかりならんと頭ごなしに言い続ける上司(会社)が、あなたに相当なプレッシャーを与えていた。そんな状況に置かれたら、誰でも行き詰ってしまうかもしれません」というような言い方である。
しかし、この場合も、「問1」のところで述べたように、相手に迎合するような言動をしてはならない。
いずれにしても、自白を求める前には、事前の証拠固めが不可欠である。その順番を間違えると、虚偽自白の強要という事態を招く。尋問する側は十分に注意が必要だ。(甘粕潔)