後継社長を見極めるポイント こんなタイプにはだまされるな

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組織を発展させ、社員を守るという使命感があるか

   彼女は、誰に指示を受けるでもなく毎日社長の病室に足を運び、今会社にとって何が必要かを考えた上で、意識もうろうとした社長に無理を承知で「この件はどう対処したよいのか」「あの話は誰の意見を尊重すべきなのか」等々、熱心にいくつもの質問を投げかけては、社長のおぼつかない反応をもとに「社長指令」をつくって社内を統制したのです。社長が1か月半後に退院し、しばしの静養後に無事職場復帰する頃には、彼女はすっかり社内で「社長の後継者」的まなざしで見られるようになったと言います。

「私は連日の高熱でもうろうとしていたのですが、毎日娘がうるさくあれこれ話しかけてきたのはよく覚えています。後で娘に聞いたら、とにかく必死だったと。唯一身内の自分がなんとかしなければ会社はつぶれてしまい、社員が路頭に迷うかもしれないという使命感が、自らを突き動かしたと言っていました。娘があんなに頼もしいとは思わなかったです」

   以来社長は、娘さんを後継として育てるべく奮闘中です――

   そこで私は、先のH社社長の質問に対し、次のようなJ社社長の大病後の言葉をそのままお伝えしました。

「社長の地位や権限や待遇を欲しがって、社長のイスを欲しがる者は後継にはなり得ません。なぜなら彼らは、自己の利益のために社長になろうとしているからです。組織を発展させ社員を守るという使命感があるか、そして他力本願ではなく自ら動いて組織を率いる行動力があるか、それが最大の見極めポイントですね」

   これを聞いたH社社長は、「なるほど」と大きくうなずいておられました。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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