「自爆営業」でギフト券を買い取る慣行 法律的に問題はないですか?

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弁護士解説 賃金には「通貨払い」と「全額払い」の原則がある

   ギフト券を売るという業務があるのはいいとして、売れないとその分を給与から差し引かれるのであれば、購入を強要されているも同然ですね。いわゆる自爆営業については様々な法律的な問題があるので詳しく解説いたします。

   まず、労働基準法16条では、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償を予定する契約をしてはならない」と定められていますので、企業は、ノルマを達成できない場合に従業員に違約金の支払いを義務づけ、給料から差し引いたりすることはできません。また、ノルマが達成できなかった場合に従業員に対し、購入を義務付けることも同じです。この条文に違反すると6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます(同119条)。

   また、ノルマを達成できなかった場合に、その分の給与天引きが行われるとすると、賃金の「通貨払いの原則」と「全額払いの原則」に反することにもなります。同24条1項では「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定められていますので、賃金は、自社製品や商品などの現物支給ではなく、通貨で全額支払わなければならないため、給与天引きはこれに反します。この条文に違反すると、30万円以下の罰金に処されます(同120条)。

   さらに、刑法上の問題にもなり得ます。刑法223条1項は、「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する」と強要罪を規定しています。ギフト券の購入は、雇用契約における従業員の義務ということにはできません。それにもかかわらず、給与から差し引くなどのプレッシャーを与えて、本来的に義務のない買取りを強制すると、強要罪にも該当する可能性が出てきます。

   以上の通り、会社が従業員に過度な購入を強要することは、法律的に相当問題があり、また従業員にとって経済的にも精神的にも負担を感じさせる行為です。場合によっては、契約を取り消して、買った代金を取り戻すことも考えられますので、弁護士に相談してみて下さい。

   日本全国の経営者に周知して、自爆営業をさせる企業を無くしていきたいですね。


   ポイントを2点にまとめると、

(1)自爆営業は、労働基準法に違反し、6か月以下の懲役や30万円以下の罰金になる上、「通貨払いの原則」と「全額払いの原則」にも反し、30万円以下の罰金にも処される。
(2)強要罪という刑法上の問題にもなり得、3年以下の懲役刑に処される可能性もある。

岩沙好幸(いわさ・よしゆき)
弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業後、首都大学東京法科大学院から都内法律事務所を経て、アディーレ法律事務所へ入所。司法修習第63期。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物が好きで、最近フクロウを飼っている。「弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ」を更新中。編著に、労働トラブルを解説した『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。
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