組織をむしばむ「人事の私物化」 だから社員が辞めていく

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使い込み社員をかばった結果・・・

   社長に私が聞いたR部長の本音を伝えると、全く納得がいかない様子でした。

「R部長には、君がナンバー2だと伝えてある。給与もRの方が多いことも知ってるはずなのに、なんでそんなことを言うのだろう」

   社長としてはそれなりにバランスをとっているつもりなのですが、実力でナンバー2を勝ちとったR部長からすれば口頭でナンバー2と言われても、付き合いが古く社長の覚えが良いだけで側近的な役割を帯びて取締役の座に座っているN部長の処遇は腹立たしく、逆に自分が正当に評価されていないと感じて仕事に対するやる気さえもそがれてしまったのです。「人事の私物化」の弊害と言えるでしょう。

   営業の根幹をグリップするR部長に辞められては会社が回らなくなるD社。社長はR部長を常務にすることで、N部長との格差を周囲からも目に見るようにして、ひとまずその場はおさめました。しかし、問題は解決していないので、いつまた火を吹くかもしれません。

   機械商社T社では「人事の私物化」が、実際に会社経営を狂わせてしまいました。40代営業課長の百万円を超える経費使い込みが発覚し、大問題になりました。就業規則から見ても当然懲戒解雇が妥当だったのですが、社長の意向は「H課長は営業の中心人物として長年よくやってくれているし、一時の気の迷いに違いない。使い込みは賞与で分割返済させて、もう一度チャンスをやりたい」、との温情対応でした。

   事件の話は社内に広まり、社員は皆、H課長が解雇されるものと思っていました。しかし社長は、自分の考えを押し通しました。社内では「H課長は社長一のお気に入りだから、温情処分になった。あれじゃ社員に示しがつかない」との陰口が横行し、課長の職場復帰によって会社全体をよどんだ空気が包み込みました。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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