予定より早く仕事が終わった日は16時に帰ってのんびりショッピング――制度上はそんなことも可能なはずの「裁量労働制」。実際の勤務時間とは関係なく、一定の時間を働いたとみなして給料を払う仕組みだ。
一方で、想定時間を上回る長時間労働が連日続いても、「(超過分)残業代」は出ない制度でもある。2015年5月12日には、毎日新聞などが、裁量労働制で働いていた男性について労働基準監督署が過労死として労災認定した事例を報じた。適用される業務の拡大を含む法改正案が国会に提出されるなか、ビジネスパーソンの間では、賛成と反対、どちらの声が大きいのか。
「早く帰れるわけない」「残業代のために日中ダラダラやってる社員も」
現在、一部の(専門・企画)業務にのみ適用されている裁量労働制について、今国会に提出された労働基準法改正案では、法人向け提案営業職にも適用する内容が盛り込まれた。効率的で多様な働き方が広がることを期待する声もあるが、働き過ぎが常態化するのでは、との懸念も絶えない。
同制度に関して、日経新聞社とNTTコムオンライン・マーケティング・ソリューションが共同で意識調査を行ったところ、導入反対(「どちらかと言えば」を含む)が52.7%、賛成(同)は47.3%と、反対派がやや多いもののほぼ拮抗する結果になった(日経新聞5月5日付朝刊)。対象は20~60代の会社員で、総回答数は1067。
今回の改正案国会提出を受け、ツイッターなどでも賛否のつぶやきが続々と上がっている。
反対の立場からは、「まだまだ日本では上司の言うことに従って、多残業を厭わない人材がもてはやされますからねえ」「成果が出れば早く帰れるって表現ありますが、早く帰れるならこっちの仕事もやって、と言われるのがオチで、結局早く帰れるわけないよなあ・・・」と、制度の趣旨通りにはいかないという指摘が出た。
また、適用業務の限定が守られておらず、「多くのIT企業じゃ、既にSEや管理職とは言えないようなリーダーに裁量労働制を適用してる」と、強い危機感を訴える声も目立った。
一方、賛成派からは、「朝の出社時間がある程度自由なら裁量労働制、賛成だけどなー」「残業代もらうために日中ダラダラやってる社員もいるので、裁量労働制は賛成」と期待する声が集まる。
制度導入が広がると、長時間労働が見直されることになるのか、かえって長時間労働が蔓延する結果になるのか、見極めにはまだ時間がかかりそうだ。(KE)